競技の第一線に立つプロスポーツ選手は、いかにして自身のキャリアを形成し、アスリートとして日々“戦って”いるのか。フィールド以外の場面でも、そこにはプロとして様々な思いが去来しているはずだ。
神戸製鋼コベルコスティーラーズでウイングを務める山下楽平は現在29歳。ラグビー選手としても円熟期を迎えつつあるが、SNSでの情報発信や競技普及のためジュニア・ユース層の育成にも取り組んでいる。
その根底にあるのは、自身がこれまでに大事にしてきた「ラグビーを楽しむ」という姿勢だ。単独インタビューを通じて、自身のラグビーとの出会いや知られざるプライベートの一コマ、そして今後のラグビー界への思いなどを語ってくれた。
◆神戸製鋼・山下楽平が語る「ウイング論」 紙一重の判断に求められる戦術とマインドとは
■常に変わらない「ラグビーを楽しむ」という姿勢
―ラグビーとの出会いを教えてください。
生まれは京都の宇治市なんですけど、早くに大阪に引っ越して少年時代の大半は枚方市で過ごしました。枚方はスポーツが盛んなところで、ウチの親も子どもに何かスポーツをやらせたいということで、少年野球やサッカーを見学にいったんです。
小学校2年生のことですから記憶は曖昧ですけど、そのひとつにラグビースクールがあって、僕としては自分でラグビーを選んだと思っています。ただ、父が社会人のラグビー選手だったので、もしかしたらそう仕向けられたのかもしれませんね。
正直、小学生のときはラグビーはただの遊びで、友達と一緒にやっている野球と変わらなかったですね。特別、それに夢中になったとかはなかったと思います。
―いつごろから真剣にラグビーに取り組んだんですか。
明確にプロを目指そうなんて、思ったことはなかったんじゃないかな。
今も思っていることですけど、僕のなかでは、プロでやろうが遊びでやろうが、ラグビーはラグビーです。楽しいからやっているわけで、楽しいから一生懸命打ち込めるんだと思います。プロだからキツい練習に耐えられるとか、そういうふうに考えたことはないです。
学生の頃は「うまくなりたい」「カッコいいプレーをしたい」という気持ちだったのが、今は「チームのために」「応援してくれる人のために」と大義は変わりましたけど、楽しいからラグビーをやる、という基本姿勢は変わってないと思います。
また、ラグビーは自己表現の場でもあると感じています。自分のプレーを見てもらい、どんな人間なのか、どんな思いなのか、そういった部分も伝えられたらと思っています。
―京産大時代にはニュージーランドに留学しましたね。
大学のとき、キツい練習を続けるうちに、ラグビーしかないんだ、ラグビーが全てだ、これをやめたら自分に何が残るんだ、という考えに自然に傾きかけていました。
それがニュージーランドに行ったら、子供も大人も自分自身のためにラグビーをしているわけですよ。ベースにある「好きだから」「楽しいから」がよく見えたんです。その感覚に直に触れたときに、「そういえば最近、そういうふうに考えてなかったなぁ」と思って、「楽しいからやる」という考えに立ち返ることができました。それだけでもニュージーランドにいった価値はありましたね。
■プライベートでは茶道とヨガ、プレー以外でも広がる世界
―プライベートの時間での過ごし方なども是非教えてください。
知り合いに「先生を呼んでお茶会をするから、一緒に参加しませんか」と誘われて、茶道をしています。普段の体を激しく動かす状態から、静の状態にスイッチを切り替えるのが、ものすごく気持ちいいんです。宇治の出身なので、自分のルーツにお茶があることも感じています。幼稚園の頃のアルバムに茶道をしている写真があるんですよ。
もうひとつ、神戸の生田神社で開かれているヨガにも参加しています。ストレッチをするのではなく、瞑想が主体のヨガで、しっかり自分を見つめ直すことができます。ビジネスパーソンが多く集まるので、終わった後に自分たちが取り組んでいることを話し合うと、世界が広がっていくのを感じます。休みの日の使い方として、これ以上のものはないな、と感じています。
―最近、ゴルフにも凝っているそうですね。
チームの先輩の谷口到さんと村上正幸さんと一緒に、毎年ハワイ旅行をしているんです。2年前に「今年はゴルフをしよう」といわれて、「はい、分かりました」と軽い気持ちで練習も何もしないでコースに出たのが最初です。そのハワイのロケーションというか、環境がめちゃめちゃ気持ちよくて。スコアがよかったわけじゃないんですけど、日本に帰っても続けよう、と決めましたね。
ゴルフの何が楽しいかといわれれば……、これはアスリート的な感覚なんでしょうかね、できなかったことができていくのが楽しいです。シーズン中は週に2日休みがあるので、時間があるときは打ちっ放しに行ったり、コースに出たりしています。そう頻繁には行けませんけどね。