米『タイム』誌は9月11日号でオリンピックに参加するプロ野球選手として西武ライオンズの松坂大輔を取り上げ、「大リーグを夢見るティーンエイジャーの右腕にかかる金メダルへの期待」と報じた。
プロ解禁となった五輪野球だが、日本が米国同様五輪代表チームへのプロ選手の大量派遣を見送るなか、松坂が果たす役割は大きい。松坂は、日本に金メダルを持ち帰ることができるか。米『スポーツ・イラストレーテッド』誌の予想はずばり「金メダルは日本」だ。
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■「松坂のマジックが必要」
タイム誌は1998年夏の甲子園大会で、松坂が17回を投げ抜いた翌日にリリーフとして登板、さらに翌日にはノーヒットノーランの快挙を達成したことを挙げ、日本のメダル獲得には「3連投する松坂のマジックが必要」としている。タイム誌が語るほどのマジックが必要とは思えないが、日本の金メダル獲得が松坂の右腕にかかっている点は間違いないだろう。
五輪大会では、8チームが総当たりする予選リーグが行われ、上位4チームが決勝トーナメントに出場、メダルを争う。
日本は17日から始まる予選リーグの初戦で、3A選手を擁する米国と対戦。さらに24日までの7連戦の中で、プロリーグを中断してドリーム・チームを送り込んだ韓国、さらに五輪2連覇を成し遂げているアマ世界一のキューバとも顔を合わせる。
日本側は初戦、松坂の先発で波にのり、さらに中4日で対韓国戦、もしくは中5日で対キューバ戦に松坂を先発させ、強豪相手に2勝して予選を切り抜けたいところだ。
日本は野球が公開競技として採用された1984年のロサンゼルス大会で金メダルに輝いたものの、正式競技となった92年のバルセロナでは銅、96年のアトランタでは銀と、キューバに金をさわられている。
■古田敦也、欠場の影響は……
金属バットが禁止となった今大会は、キューバの強力打線も苦戦を強いられるとみられ、逆に今大会から参加するプロ選手は木製バットに慣れているだけに、キューバを倒すチャンス。強豪チームの力が拮抗しているだけに、ひとつの星が大きくメダルに影響を与えそうだ。
日本チームにとって、日本一の捕手とささやかれるヤクルト・スワローズの古田敦也捕手が参加しないのは、なんとも痛い。古田は、今回の五輪予選でも、そのたくみな配球で他チームを封じ込めただけに、代わって正捕手に座ると予想される中日ドラゴンズの鈴木郁洋捕手のリードに期待がかかる。
CNN.com 2000年9月16日掲載分に加筆、転載
著者プロフィール
たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー
『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨークで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。
MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。
推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。
リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。