【ボクシング】村田諒太は「勇気を振り絞った一撃」で歴史に名を刻めるか “世紀の対決”ゴロフキン戦展望

(C)Getty Images

ついにこの日がやって来る。村田諒太ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)、通称GGGによるWBA・IBF世界ミドル級王座統一戦が9日、さいたまスーパーアリーナで行われる。日本のボクシング史上に残る一戦をじっくりと展望しよう。

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■圧倒的戦績を誇る超一流王者

過去に日本で試合を行った大物ボクサーといえば、まず、マイク・タイソンの名前が挙がる。タイソンの来日は大きく報道され、社会現象にまでなった。ゴロフキンはタイソンに勝るとも劣らぬスーパースターだ。しかも、村田という日本人チャンプと統一戦を行うのだから価値がある。

まずは、ゴロフキンがどれほどすごいボクサーか、簡単におさらいしておこう。プロ戦績が41勝(36KO)1敗1分。アマチュアでは345勝5敗というから凄まじい。プロ、アマ通じて、一度もノックダウンがないタフさも特筆だ。プロでの1敗1分の相手は、ともにパウンド・フォー・パウンドNo.1のカネロ・アルバレス。しかも、2試合とも接戦でゴロフキンが勝っていたという専門家も多かった。

17試合連続KO防衛はウイルフレッド・ゴメスに並ぶ世界記録。23戦連続KO、ミドル級の20度連続防衛と驚異の記録が並ぶ。36度のKO勝利に要した平均ラウンドが、たったの5.56というのもすごい。間違いなくボクシング史上に残るKOアーティストといえる。

ゴロフキンのフィニッシュブローは、肘を上げ気味にして独特の角度から打ち下ろす特徴があるオーバーハンド。この威力満点のパンチでKOの山を築いてきた。そして、KOのお膳立てをするのが、スナップの効いたジャブだ。速くて威力のあるジャブで1ラウンドからペースを握るのが勝利の方程式だ。

では、この超一流チャンピオンに死角はないのか? よく指摘されるのが年齢。4月8日生まれのGGGは、試合直前に40歳を迎える。スピード面、体力面での衰えがないとはいえない。さらに前戦1年4カ月というキャリア最大のブランクで迎える一戦ということもあり、仕上がり具合が注目される。

もうひとつの不安要素はトレーナーだ。長年コンビを組み、快進撃を支えてきたアベル・サンチェスと2019年に金銭トラブルで別れてから3試合を行ったが、判定までもつれたセルゲイ・デレフヤンチェンコ戦は最も苦戦した試合だった。そして、モチベーション。3月31日に来日してからも、「今後はカネロとの第3戦にターゲットを絞る」と話している。今回の試合をチューンアップと侮るようなら隙があるかもしれない。

■村田の勝利には戦術と勇気が必須

一方、村田のモチベーションは最高潮に達している。ゴロフキンは村田にとってアイドル的存在。キャリアのすべてをかけて“恩返し”したい気持ちは大きい。その表れが、4カ月半で400ラウンド近く行ったというスパーリングだ。試合を1週間後に控えての、「感慨深い。緊張、不安、恐怖といってもいいのかもしれない」というコメントにも決意が滲む。

村田が勝つには戦術的な工夫が必要だ。まず、ジャブで下がらないこと。デレフヤンチェンコは前に出てボディを叩く作戦で善戦した。村田も体の大きさとブロック力を生かして、前に出たい。そして、ボディにパンチを当てることが重要だ。タフなGGGに顔面へのパンチでダメージを与えるのは難しいはずだ。

そして、大きいオーバーハンド・フックに合わせてカウンターを取りたい。容易でないことは分かっている。しかし、勝つためには勇気を振り絞った一撃が必要だ。歴史に残る素晴らしいファイトを期待したい。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。


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