【ボクシング】“次期エース候補”中谷潤人、山内涼太との防衛戦で飛躍なるか アンダーカードの枠を越えた熱戦の予感

初防衛戦で勝利した中谷潤人(C)Getty Images

9日に行われる村田諒太ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)のWBA・IBF世界ミドル級王座統一戦がボクシングファンの注目を集めているが、そのアンダーカードにも興味深い試合が組まれている。チャンピオンの中谷潤人山内涼太が挑むWBO世界フライ級タイトルマッチと、吉野修一郎伊藤雅雪が激突するライト級の一戦だ。

ここでは、両試合の見どころと展開を予想してみる。

【実際の映像】これが相手の鼻をへし折った完璧な一打…米国でも高評価された中谷潤人の“衝撃の左ストレート”と大量出血したアコスタの悲痛な表情

■磨きがかかった王者中谷の左ストレート

中谷の初防衛戦は、2021年に行われたタイトルマッチのなかでもっとも印象に残った試合だった。

長い手足を使ったアウトボクシングだけではなく、鋭く踏み込んで左ストレートを打ち込むスタイルを披露。強打の元チャンピオン、アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)の鼻をへし折り、この試合で戦績を22勝(17KO)無敗と伸ばした。若干23歳での初防衛成功は、ニューヒーロー誕生を予感させるものだった。

当初、防衛戦の対戦相手はクリスチャン・ゴンザレス(メキシコ)だったが、今回は挑戦者が山内涼太に変更された。山内の戦績は8勝(7KO)1敗。キャリアは浅いが、同級2位にランクされている。オーソドックスでバランスが良く、左ボディ、オーバーハンド気味の右ストレートに威力がある。戦績が示すとおり相手を倒し切るパンチ力が魅力だ。

しかし、チャンピオンとの身長差、リーチ差は大きい。速いストレートをかいくぐって距離を詰めるシーンはイメージしづらい。逆に中谷にとっては左のストレート、アッパーを当てやすい展開になりそう。中盤までのKO決着の可能性が大きいとみる。フライ級としては体が大きい中谷には、複数階級制覇の期待も高まっている。スーパーフライ級には安定王者の井岡一翔もおり、日本ボクシング界をより盛り上げていくためにも、この防衛戦でその実力を改めてアピールしたいはずだ。

■吉野vs.伊藤は主導権争いが焦点

もう一つの注目カードである吉野と伊藤の試合には、吉野が持つ東洋太平洋とWBOアジアパシフィックライト級王座、2つのタイトルがかかる。14勝(11KO)無敗と勢いに乗る吉野と、WBOスーパーフェザー級チャンピオンのベルトを巻いた経験がある伊藤。次期世界挑戦のチケットをかけた注目の一戦だ。

両者のスタイルは対照的。吉野はパンチ力を生かすファイターで、7度防衛した日本タイトル(返上)は6KOと圧勝してきた。プレスをかけながら自分のペースに持ち込む戦法に迷いはないはずだ。下のクラスから上がってきた挑戦者を体力でねじ伏せたいところ。

一方の伊藤は攻守兼備のファイター。いきなり右ストレートを出したり、左フックから入ったりと、試合を作るセンスにも長けている。世界タイトルを奪取したクリストファー・ディアス戦、初防衛のエフゲニー・チュプラコフ戦の2試合は、伊藤の良さが出たベスト・パフォーマンスだった。

さらに、伊藤には吉野の攻勢をかわすディフェンスの技術がある。「(今まで)3、4発当たっていたパンチは、ぼくには当たらないと思う」と、本人も自信のコメントを残している。逆に吉野にとってディフェンスは弱点で、これまでにも危ないパンチを何度ももらっている。

両者と対戦した細川バレンタインは、吉野には「倒されるかもしれない怖さ」、伊藤には「臨機応変に戦ううまさ」を感じたという。いずれにしても、実力伯仲の好試合になることは間違いない。試合結果の予想も難しいが、世界戦を3試合戦った経験のある伊藤の判定勝ちとしておく。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。


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