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【全仏オープン】パリから始まるイガとココのライバリー シフィオンテクが2度目の優勝

【全仏オープン】パリから始まるイガとココのライバリー シフィオンテクが2度目の優勝
全仏決勝を終え笑顔を見せたイガ・シフィオンテク(右)とココ・ガウフ(C)Getty Images

■新たな成長への決意と同時に掴み取った自信

その数分後、女王に訪れた2度目のグランドスラム・タイトルの瞬間。歓喜のあまりファミリーボックスに走っていくシフィオンテクを見ることなく、ガウフの頬には一筋の涙が流れた。「数年前からここに立つ準備は出来ている」と話し、現実になった夢の大舞台。負けた悔しさを僅かな時間で呑み込み、受け入れていく心の強さは彼女の資質であり、ここまでの道のりを象徴するものだろう。決勝後には、負けた姉を想い泣く弟に「これはただのテニスの試合よ、またトランプでもして笑って元気でいようね」と声をかけたという。

僅か18歳……されど15歳の時にウィンブルドンの予選を突破し、母国のスターであるビーナス・ウィリアムズを破り2週目に突入した天才は、すでに人生の喜びがテニスの勝利だけに縛られることはないと知っている。ただ向かってくる明日を見据え、出来る限り備える。それは今以上の活躍が待っているのだと信じて疑わない姿だった。

そんな18歳の次に泣いたのは世界ランキング1位の21歳だった。

表彰式で自国の国歌が流れるとともに目をつぶり、眉をしかめる。「2020年の時の優勝はただ運が良かっただけだから…でも今回は本当に仕事をしたと感じている」そう語る彼女の肩には、2月から続く連勝への期待と同時に、ポーランドで初の世界女王として立つ頂への責任感ものしかかっていたことだろう。アシュリー・バーティ(オーストラリア)の突然の引退から、明け渡された女王の座。しかし、その座を確固たるものにした35連勝という結果には、彼女を誇らしくさえ思った。

2人の心に沸く確かな感情、新たな成長への決意と同時に掴み取った自信。勝者と敗者で流す涙は異なるものの、今後この2人が女子テニス界を牽引すること間違いない。

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著者プロフィール

久見香奈恵●元プロ・テニス・プレーヤー、日本テニス協会 広報委員

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1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動に尽力。22年よりアメリカ在住、国外から世界のテニス動向を届ける。