【Bリーグ】稀代のスコアラー折茂武彦さん、コートを去る その「かまってちゃん」の素顔を後輩たちが暴露

 

【Bリーグ】稀代のスコアラー折茂武彦さん、コートを去る その「かまってちゃん」の素顔を後輩たちが暴露
写真は2016年12月16日対アルバルク東京戦 現役時代の折茂武彦社長(C)Getty Images

日本バスケットボール史に残る稀代のスコアラー・折茂武彦さんの「引退試合」が6月18日、レバンガ北海道のホーム・北海道立総合体育センター(北海きたえーる)で行われた。

実際にユニフォームを脱いだのは2019−20シーズンだったが、コロナ禍によって予定されていたイベントは2度に渡って延期を余儀なくされ、今回ようやく、開催にこぎつけた。

会場には5400人を超えるファン・ブースターが、今は選手の肩書が取れてレバンガの社長を務める52歳のために駆けつけた。また、選手としての彼を送り出すために集った面子も豪華だった。

来場者全員に特別折茂ユニフォームレプリカが進呈された   撮影:永塚和志

いずれも折茂さんと関係が深い面々だが、元選手側では“盟友”として知られる同級生の佐古賢一・現レバンガヘッドコーチや日大とトヨタ自動車でのチームメート関口聡史さん、やはりトヨタで同じユニフォームを着た古田悟さんなど、往年の名選手たちばかり。現役側も、比江島慎田臥勇太(ともに宇都宮ブレックス)や田中大貴(アルバルク東京)らが参加した。

キャリアの晩年はともかく、若い頃の折茂さんには「怖い」、あるいは「尖っている」という印象があった。本人も、北海道に来る前、Bリーグ以前の実業団・トヨタ自動車(現アルバルク東京)に所属していた頃にはファンのことなど考えてプレーしたことなどなかった、自分が歩いていく先の人垣が彼を避けるように「モーゼの十戒」の海のように割れた、と話したこともあった。

それでも、これだけの人たちが集まったのは、特別な才能を持っていた選手としてだけではなく、折茂さんに人徳や、人を引きつける魅力があったからではないか。

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日本代表など長く折茂さんと付き合ってきた五十嵐圭群馬クレインサンダーズ)や竹内公輔(宇都宮)などは引退試合後、折茂さんとのエピソードは、公には「言えないことが多すぎて」と笑った。

自身が大学生の頃から折茂さんと日本代表でプレーした竹内は「ギリ言えるエピソード」として、一緒に食事をする時に先輩である折茂さんが必ずすべて支払ってくれるという「男気」について話した。

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■オールスターの賞金も全部みんなのために使い切る

竹内は「オールスターとかの賞金は全部その日に使うようにしてるようで、1円も自分の財布に入れないで『これは今日、みんなが取らせてくれた賞だからみんなで使い切ろう』と。2年前の(北海道での)オールスターでも100万円くらいMVPの賞金としてもらっているんですけど、喋ったこともない外国人選手とかにも『今日行く店(の料金)、全部俺につけといて』と言って、他の選手にはお金を出させない。そういう筋を通すんです。これはギリ言えるエピソードで、あとはもう…ちょっと言えないです(笑)」と暴露。

2006年の世界選手権(現ワールドカップ)で日本代表を担い、折茂さんと付き合いの長い五十嵐は、そんな印象とは対象的に彼は「かまってちゃん」だと表現した。

「僕自身は怖いという印象はまったくなかったのですが、折茂さんはとにかくかまってほしい、いわゆる『かまってちゃん』だと思うので、そういう意味では僕らも接しやすかったですし、彼も気さくに話してくれました。後輩でも、年齢に関係なく接してくれるというのは、プレーでの折茂さんとは違った凄さかなと思います」と五十嵐は語る。

日本バスケ界の代名詞的存在の田臥は米大学を中退後、折茂さんのいるトヨタ自動車で1年間プレーした。当時の折茂さんはまだ30歳を超えたばかり。五十嵐と対象的に田臥の折茂さんへの印象は「怖かった」だったが、時間とともにそれが思い違いだったという。

記者会見に応じる田臥勇太(左)と五十嵐圭   撮影:永塚和志

田臥は「僕も最初は本当に怖かったんです。トヨタへ行った時に、どういう風に接してくれるのかなと思っていたのですが、いざ一緒にバスケットをやらせてもらったら、下(後輩)に対して面倒見が非常に良くて。折茂さんがこれだけ愛される理由は、やっぱり長くお付き合いをさせていただければいただくほどわかりますね。非常におしゃべりも上手で(笑)。面倒見も良くて、バスケットも上手で。本当、素晴らしい先輩です」と振り返る。

引退試合はもちろん折茂さんに花を持たせるものだったため、彼に積極的にパスを回してシュートを打ってもらっていた。結果、稀代のスコアラーは42得点を挙げ、アリーナを湧かせた。折茂さんが前後半でチームを代わるなど、緩やかな形で行われたエキシビションとなったが、現役選手で構成されたTeam 9が往年の選手中心のTeam Legendを80-76で破った。

引退試合にて42得点を記録した折茂武彦「社長」 (C)レバンガ北海道