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【ボクシング】史上2度目となる日本人同士の統一戦 寺地拳四朗 vs. 京口紘人は歴史に残るフルマークTKO

【ボクシング】史上2度目となる日本人同士の統一戦 寺地拳四朗 vs. 京口紘人は歴史に残るフルマークTKO
寺地のフルマークを示す採点表 Prime Video Twitterより転載

WBC世界ライトフライ級王者、寺地拳四朗(BMB)とWBA同級王者、京口紘人(ワタナベ)による日本人同士の王座統一戦が1日、さいたまスーパーアリーナで行われ、踏み込み鋭い右ストレートをクリーンヒットした寺地が7ラウンド2分36秒で、TKO勝利を収めた。

試合が決まってからの両者の表情は対照的だった。記者会見でも寺地スマイルを振りまいたWBCチャンプに対して、京口は終始、硬い表情を崩さなかった。自身のYouTubeで「勝っても負けても最後のつもりでやる」と語るなど、待たされてきた京口のほうが、試合に対する決意は強いように感じられた。

◆【実際の映像】寺地拳四朗、京口との乱打戦を制し世界王座統一! 最後はふらつく京口に鮮やかな右ストレートでレフェリーストップ

■第1ラウンドの作戦が明暗を分けた

試合開始のゴングが鳴る。誰もがファイタータイプの京口が前に出ると予想したが、攻勢に出たのは、意外にも寺地だった。寺地は、今年3月に矢吹正道を3ラウンドTKOでリベンジした試合で積極的に攻撃するスタイルを披露。この大事な試合でも、その積極策を選択した。

一方の京口はガードを固めてパンチをブロックし、ストレート系のカウンターを狙う戦略。手数で勝り、第1ラウンドを取った寺地が試合の主導権を握った。

結果的にこの戦略が両者の命運をわけた。

京口のパンチを見切った寺地は、2ラウンド以降もペースを渡さず、ときおり大きな右アッパーも見せるようになった。手数、勢いともに優勢のラウンドが続く。

これまでも京口の弱点はディフェンスといわれてきた。それを補ってきたのが、迫力のある攻撃力だった。ディフェンシブに戦うWBAチャンピオンは、寺地のスピード豊かなワンツーの格好のターゲットになってしまった。

■ダウンで開き直った京口が逆襲、あわや逆転の見せ場を作る

そして迎えた第5ラウンド。自信を持って放たれた右ストレートが京口のテンプルにヒット。きれいなノックダウンを奪った。京口は立ち上がったが、ダメージは明らか。勢いに乗る寺地が試合を終わらせようとラッシュを仕掛ける。

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しかし、ここで開き直った京口が反撃に出る。持ち前の左右フックが寺地をとらえて後退させ、打ち疲れた寺地に対しあわや逆転KOかという見せ場を作った。この試合で一番の盛り上がりが訪れたところで、ラウンド終了のゴングが鳴った。

■圧勝した寺地、次戦は3団体統一戦

第6ラウンドは、冷静さを取り戻した寺地がペースを取り戻す。自らの打ち疲れの回復を待ちつつジャブをカウンターで当て、ガードを下げる余裕。一方の京口もダウンの影響からの回復を待ったのか大きく動かず。ラウンドは、嵐の前の静けさのように終了。

そして、第7ラウンド。逆襲を狙って前がかりになった京口が第5ラウンド終盤のような攻めを見せるのかと思われた瞬間、寺地のワンツーが京口を襲い、さらにダメ押しの右ストレートがクリーンヒット。ロープまで吹っ飛んだ京口の体を支えたレフェリーが試合の終了を宣言した。公式採点は寺地のフルマーク。第1ラウンドから試合をコントロールした寺地の圧勝だった。

結果こそフルマークの上、TKOだったが、2人の手に汗握る攻防は、日本ボクシング史に残る激闘だった。京口がもし序盤から積極的に出ていたら、この展開は変わったのか。その再戦はあるのか、ファンとしては見てみたいものだ。

試合後、リング上でインタビューを受けた統一チャンプは「幸せです」と素直に感情を表現。信頼をおく加藤健太トレーナーを呼び寄せるとチャンピオンベルトのひとつを肩にかけた。

さらに、アンダーカードで岩田翔吉(帝拳)を3-0の判定で退けてWBO王座を守ったジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)と、「統一戦をやろう」と非公式に話したことを明かした。これが実現すれば、3団体統一マッチということになる。

試合後、寺地の戦績は20勝(12KO)1敗、京口は16勝(11KO)1敗となった。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。