【競馬】異例とも言える騎手4名の合格 調教師試験から見る主催者のジレンマ

■新規調教師試験、今年は蛯名騎手ら7名が合格

12月10日に令和3年度の新規調教師免許試験合格発表があった。美浦4人、栗東3人の計7人。調教師免許が有効になるのは年明け1月1日からだが、当然のように、すでに調教師としての動きはそれぞれに始まっている。

美浦組を見てみると、合格者の一人、蛯名正義騎手の場合、騎手免許が切れる2月いっぱいはレースに騎乗するが、西田雄一郎騎手、村田一誠騎手は12月いっぱいで騎手免許を返上。堀内岳志助手の場合も1月1日から肩書が変わって、開業へ向けた準備に入ることになる。

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その中で今年の合格者リストを見て特異に感じられるのが、7人のうち4名が騎手であり、それも全員が現役であるということだ。同じ年に現役騎手4人が合格するケースは、ちょっと記憶がない。

最年長の蛯名51歳、最年少の畑端省吾38歳。他の2人も競馬学校騎手課程卒だから、机に向かっての勉強が得意、というわけではあるまい。さらに年齢を踏まえれば、4人の合格はそれだけで偉業のようにも感じられる。蛯名と西田が3度目、村田にいたっては6度目の挑戦での突破というのだから、やはり並大抵の努力ではなかっただろう。

■騎手から調教師へ それを阻む高い壁の正体

ここで疑問が生じるのは、調教師になることについて、どうしてそこまでハードルが高くなくてはならないのか、ということだ。騎手は下部組織でしっかり教育を受けている。そのうえで騎手として数年を過ごした経験は決して小さくないだろう。蛯名にいたっては先週の時点で通算勝利数歴代3位という、顕彰者クラスの騎手である。そういうプロが調教師になろうとして、一発合格できない理由はどこにあるのか。

競馬の世界は原則的に優勝劣敗。調教師になってみたはいいが、ダメならダメで、あとは消え去るしかない。それならば門戸をもっと広くしてもよさそうなものだが……。ここには主催者と、主催者に認可されることで開業が許される調教師との間に、力関係らしきものが窺い知れる。要するに、主催者側は頭を押さえ、主導権を握りたい。その時、多くのファンがついている騎手上がりの調教師は、厄介なのではないだろうか。

そして、ここで新たな疑問が。簡単に合格させたくない騎手が、なぜ今年、4人も合格することになったのか、だ。しかし前述の通り、騎手は多くのファンを抱えている。それだけでなく、馬主や生産者の後押しも受けやすい。それは開業後の運営面で、アドバンテージがあるということ。その点は主催者側も認めざるを得ないのだ。

一失一得に揺れる主催者。このシワ寄せは、調教師になろうとしている調教助手達に向かいかねない。助手として腕を磨けば磨くほど、厩舎内でのポジションが重くなる。独立するタイミングを逸した結果、調教師の座は遠くなる。現行ルールで調教師免許が交付される限り、このあたりのジレンマは今後も続くことになるだろう。フレッシュな人材確保に、悪い影響を及ぼさなければいいのだが。

著者プロフィール

競馬“聞き耳”TM
競馬場やトレセンで取材を続けるトラックマン(TM)。東西に幅広い人脈を持ち、常に現場の情報にアンテナを張り続けている。関係者はもとより、記者仲間からも日々ネタを仕入れており、当サイトでは競馬の舞台裏、関係者の素顔が垣間見える“聞き耳”情報を配信。

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