【ボクシング】「一方通行の試合になる」井上尚弥vs.ダスマリナス戦は4団体統一への“序章”

6月17日(日本時間18日)最終公式記者会見に臨んだ井上尚弥とマイケル・ダスマリナス(C)Getty Images

WBAスーパー、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥の防衛戦(WBA5度目、IBF3度目)が19日(日本時間20日)に迫った。会場はネバダ州のヴァージン・ホテルズ・ラスベガス。昨年のジェイソン・マロニー戦もラスベガスで行われたが、閑散とした無観客試合だった。あれは“聖地”とは言えない。今回は制限を排除したかたちで観客が入る。大観衆の前で、「モンスターの聖地初見参」がついに実現する。

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■タイトルが増えない防衛戦は通過点

約8カ月ぶりのタイトルマッチだが、チャンピオン陣営には楽勝ムードが漂う。父の真吾トレーナーはWOWOWのインタビューに答えて「一方通行の試合になる」と圧勝をアピール。多くの関係者も早いラウンドでのKO勝利を予想している。

その根拠はいくつかあるが、もっとも大きいのは、挑戦者のマイケル・ダスマリナスがすでに何度か来日している点だろう。しかも、そのうちの一度は井上拓真選手のスパーリングパートナーとして大橋ジムのリングに上がった。すでに手の内がすっかり見えていて、いわゆる不気味さや未知の怖さはまったくない。

サウスポーである点が数少ないアピールポイントだが、井上は過去に世界戦でふたりのサウスポーと対戦し、オマール・ナルバエスを2ラウンド、ファン・カルロス・パヤノを1ラウンドで鮮やかにKOしている。いずれも実力者であったが、危なげない完勝だった。サウスポーだから攪乱できるとは言えないだろう。

しかも、井上はかねてから、バンタム級での4団体統一が目標と明言している。タイトルが増えない単なる防衛戦は通過点。「本番はこの後」と考えれば、チューンアップ程度と思っているのかもしれない。ある海外オッズメーカーのかけ率は33対1だ。マロニー戦では14日前に現地に入ったが、今回は10日前に短縮している。ただ、井上に限って、これが油断とはならないだろう。

■荒れ模様の試合になる可能性も

となると、試合の興味は、モンスターがどんな試合をするか。パヤノ戦では、試合開始のゴングからプレッシャーをかけ、鋭くステップインして放った最初のワンツーで仕留めてしまった。「一方通行の圧勝」とは、この戦法だろう。

しかし、もし簡単に倒せなければ、意外な苦戦も考えられる。ダスマリナスと対戦して判定で敗れた木村隼人選手は、「独特のタイミングの左アッパー」を危険なパンチに挙げている。相打ち覚悟で振ったパンチが当たらないとは限らない。

もうひとつ心配なのは、頭。ダスマリナスは左の長いボディブローを得意とするが、このときに頭が下がる。チャンピオンが踏み込んだ際にバッティングが起こる可能性がある。カットするようなことがあれば、試合は一転、荒れ模様になる。

■チャンピオンの圧倒的対応力でKO勝利か

もうひとつの戦法は、相手に出入りをさせておいて左フックのカウンターを狙う作戦だ。ダスマリナスが左を打つときに右ガードが下がるクセは、お見通しのはず。中盤まで待たずとも、強いショートフックが顎かテンプルを直撃するとみる。

5月29日(同30日)にライバル、ノニト・ドネアがノルディーヌ・ウバーリからWBCタイトルを奪取したのが、まさにこの戦い方だった。あの強烈な左フックがドネアからの挑戦状だとすれば、同じパンチで返礼するくらいの余裕が井上にはありそうだ。通過点だからこそ、危険が少ない戦い方がいい。

踏み込んで圧倒するか、左フックでカウンターを狙うか。言わずもがなだが、チャンピオンは状況に応じてうまく切り替えるクレバーさも備える。つまらない予想で恐縮だが、中盤までのKOが濃厚だろう。


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