【スポーツビジネスを読む】フライシュマン・ヒラード齊藤恵理称スポーツ&エンターテイメント事業部ジェネラル・マネジャー 前編 スティーブ・ジョブズに学んだコミュニケーション哲学

 

■『パブリック・リレーション』が持つ本当の意味とは……

「日本の企業まだまだ、広告、宣伝を起点にした戦略から抜けきれません。もともと『パブリック・リレーション』が持つ意味を理解されていませんし、その発想がなかなか変えられません」。日本企業では、コミュニケーションという哲学が希薄だと指摘する。

これは国内市場を睨む広告代理店の功罪も大きい。事業会社が代理店にマーケティング戦略に依頼すると最初に手元に届くのは、テレビCMや新聞広告を中心とした広告メニューだ。「クリエイティブ・ディレクター」と名乗るポジションも、Think different. のような哲学より、CMコンセプトやキャッチコピー、またはキャラクターを売り出すようなアイディア出しに力点を置く。

特にスポーツ領域で、この傾向は顕著だ。要するに、スポーツ×コミュニケーションについては、いまだ日本では確立されていない実情の現れだ。

パブリック・リレーションについて話す齊藤恵理称さん

日本においてもスポンサー活動などスポーツ・ビジネスに着眼する企業は少なくとはない。だが、「投資をしてはいるが、効果的に活用されていない」、「スポンサーシップを通じてどのようなレガシーが残せるのかわからない」などの課題を抱えるケースは多く、また2019年のラグビー・ワールドカップ、2020年に予定されていた東京五輪と、国際的大イベントを迎えた日本は課題を抱えていた。

齊藤さんが最初に担当したのはアディダス。やはり海外の企業は、こうしたコミュニケーションに関する戦略に関心は高い。「こうした領域では、P&Gさんも非常に巧みですよね」と齊藤さん自身も感心する。

「東京五輪が決まった際、アメリカ本社からも、日本でスポーツ分野のコミュニケーションを強化すべきだ……という提言があり、それに後押しされる形で新部署がスタートしたのです」。

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こうして、「真っ黒な」スポーツ・ビジネス界へと、齊藤さんの船出となった。

◆【インタビュー後編】日本企業のコミュニケーションには「Why」が欠ける

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著者プロフィール

松永裕司●Stats Perform Vice President

NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ Microsoft毎日新聞の協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Directorなどを歴任。出版社、ラジオ、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験を持つ。1990年代をニューヨークで2000年代初頭をアトランタで過ごし帰国。Forbes Official Columnist