【ボクシング】“モンスター”井上尚弥を刺激できるか、カシメロは二転三転した対戦相手にどう戦うか

 

【ボクシング】“モンスター”井上尚弥を刺激できるか、カシメロは二転三転した対戦相手にどう戦うか
握手するギジェルモ・リゴンドー(左)とジョンリール・カシメロ(右)(2021年8月13日)(C)Getty Images

WBA世界バンタム級チャンピオン、ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)とWBO同級チャンピオン、ジョンリエル・カシメロの一戦が、8月15日(日本時間)、カリフォルニア州カーソンのディグニティ・ヘルス・スポーツセンターで行われる。井上尚弥のライバルとなる2人の対戦をじっくりと展望してみたい。

◆“老獪”リゴンドーが見せた静かな闘志「カシメロは悪魔と対峙」「その気概をリングで見せて」

戦力分析の前に、この試合が決まるまでの経緯をおさらいしておこう。このカードは今春に発表されていたが、6月20日に行われた井上―ダスマリナス戦の直前に大手プロモーターPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)が「カシメロ vs. ネアのほうが面白い」と、勝手にカードを差し替えてしまった。

ところが、ノニト・ドネア側が「カシメロは正規のドーピング検査を受けようとしない」として、対戦を拒否。カシメロは5日遅れで検査書類を提出したが、ドネアは態度を変えなかった。こうして8月14日のカードは元に戻ったというわけだ。

IBFとWBAスーパーのベルトを持つ井上としては、カシメロ(WBO) vs. ドネア(WBC)が成立していれば、その勝者と戦うことで4団体統一を達成できるはずだった。ところが、カシメロVSリゴンドーに戻ったことで2試合が必要になってしまった。

統一後にスーパーバンタム級に上がることを表明している井上にしてみれば、誤算といえるだろう。非公式だが、年内にドネアとの再戦、来年の早い時期に15日の勝者と対戦という青写真が発表されている。

■リゴンドーは過去にドネアに勝利、ボディワークに優れたテクニシャン

リゴンドーはシドニー、アテネのオリンピック2大会で金メダルを獲った技巧派のサウスポー。プロでもスーパーバンタム級とバンタム級の2階級を制している。戦績は20勝(13KO)1敗1無効試合。唯一の敗戦は、ワシル・ロマチェンコが持つスーパーフェザー級のタイトルに挑んだもの。2階級上のパウンドフォーパウンドNo1(当時)への挑戦はさすがに無謀、完敗だった。

彼がもっとも優れる点は、ダッキングやスウェイバックなどのボディワーク。パンチを交わす技術はロマチェンコと双璧といっていい。攻撃の武器は左フックのカウンターで、ボディ、顔面のどちらにも強いパンチを打つことができる。相手がひるむと、左を強く連打して仕留める決定力もある。スーパーバンタム時代にドネアの挑戦を退けた勝利は、力関係の比較になるだろう。

しかし、すでに40歳。スピードやパワーは全盛期を過ぎたといわれる。もうひとつの弱点が打たれ弱さだ。ドネア戦で2度、天笠尚(山上)戦でも2度ダウンを喫している。カシメロに似たタイプのリボリオ・ソリス(ベネズエラ)との1ラウンドにも危ないシーンがあり、勝利したものの判定は2-1と割れた。

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暴れん坊のパンチが顎にヒットすれば、キャンバスに落ちるシーンも考えられる。さらに18カ月ぶりの試合に不安を指摘する声もある。