■「苦しい時こそ笑顔!」チア・リーダーは応援の責任者
柳下さんはチア・リーダーにとって必須のスキルをもう一つ教えてくれた。
「NBAスタイルを体現するためにとても大切なこと。それは、とにかく隙なく笑うことです。『苦しい時こそ笑顔!』というのが、練習時のかけ言葉にもなっていて(笑)。いつも皆にむかって『ほら笑って!えがおーっ!!』と叫んでいます。
チア・アップ……つまり、元気にする、元気づけることがチア・リーダーの仕事なので、人に元気をあげるためには自分達がまず絶対的笑顔でいなくてはいけません。自覚的に笑顔を広げていくのです。
自分がまず笑顔で、元気を発信することで、まわりがどんどんそれを見て笑顔になっていく。その元気によって各自が自分を超えていく、『笑顔で枠を超えるワクワク』を届けたいと思っています(笑)。そうやって、いままで沢山の人の笑顔を見れたことが本当に嬉しくて、それが自分の大好きな環境になりました」
確かに近年の脳科学によると、笑顔になることで脳が幸せを感知し、エンドルフィンなどの脳内物質が分泌され、免疫も上がるという研究結果が出ている。仮に、それが作り笑いだとしても、脳はその笑顔さえも“幸せ”と解釈してくれる。笑顔になることで顔の表情筋が刺激され、それが脳にフィードバックされることでポジティブな感情が湧くというのは、心理学の世界でも言われていることだ。
『笑顔の奇跡』という書籍を上梓した経験のある柳下さんは東京ガールズが「チア・アップのプロとして、スポーツの世界に限らず広く社会に笑顔を届け、貢献してゆきたい」と考えているという。
「チア・リーティングで、どう社会に貢献できるのか。そのためにはまず、笑顔のプロフェッショナルを育てて、“本物”を発信していきたい。世の中にどれだけチアのスピリットを届けられるかを真剣に考えています。チアを通して、笑顔で奇跡が起こるのを何度も見てきました。がんばって笑って、笑顔の力で様々な障害をも乗り超えて、物事が進んでゆく。そんな夢をパフォーマンスと言葉の両方で伝えていきたいです」
■「笑顔で走ることが未来をつなぐこと」
話を聞いているうちに、チア・アップするという概念と、その心持ちで生きていくということが人々のためになり、科学的にも裏付けがあるといる素晴らしい「情報」が、もっと世の中に広がっていけば、本当にこの世界を笑顔で変えていくことが出来るのではと思えてきた。
「もちろん、エンターテイメント性も追求し、ビジネスとして、お金もきちんとまわすことは大事です。でもその上で笑顔の伝道師、笑顔の博士であれたらと思っています(笑)」
今年10周年を迎えた東京ガールズは『チアであなたを応援します! 日本を応援します!』のスローガン通り、今やスポーツの分野を超えて多岐にわたって活躍中だ。キッズやシニアにむけてのチアリーダー・スクールも運営されており、笑顔の足りない我が子の将来のために笑顔を学ばせたいという親や、85歳でも笑顔を学びたいというご老人まで、あらゆる世代が笑顔を頑張っている。その姿をみて、またいっそう教える側にもやる気が起きる“元気の好循環”が生まれているという。
最後に、さらなる笑顔の秘密を二人に語ってもらった。
ANZU「どんなにつらいことがあっても、笑っていれば、運も、周りの人々も味方してくれます。それで、少しでも前を向いて進んでいけたらいいと思うし、この記事を読んでくれた人たちも、笑顔の力で、少しでも前に進んでくれたらいいなと思っています」
柳下「このコロナ禍で、夢や頑張ろうと思っていたことにストップがかかってしまいそうな、下を向いてしまいそうなことがあると思います。でも、こんな時こそ、家族や仲間を信じて、笑顔で走ることが未来をつなぐことだと信じてみてください。『夢の先に夢がある』が東京ガールズの信条です。夢を見るのも才能、努力も才能。何かのプロになるという才能があるのではなく、才能磨きをやっていくことによって、色んなものを掴めるようになるのだと思います。どこにどんなチャンスがあるかわからないのです。才能磨きを継続していれば、ある時だれかと出会って、同じことをしていたのに人生が変わる。そんな奇跡も起きてくれるのだと思います。ぜひ、夢をみて、夢を叶えてください。
アメリカでは、チア・リーダーをアメフトやバスケのプレーヤーと同様に、プロとみてくれるのですが、日本でも、20年前に比べるとチア・リーダーへの目線がだいぶ変わってきました。東京ガールズも、笑顔のプロとしてさらに邁進します!」
いままで筆者も「笑顔は大事」と分かっていたつもりだったが、その認識はかなり甘かったと反省させられる取材となった。正直言って笑顔の威力を見くびっていた。でも85歳のお年寄りまでが「笑顔を学ぼう」と頑張っているのだ。笑顔の奇跡を知ることに遅すぎるということは無い。
東京ガールズの夢の先の物語は、その絶対的笑顔の力によってますます素敵に、そして力強い展開になってゆくに違いない。その確信を胸に、今後の活躍を笑顔で見守りたい。
◆Tokyo2020に咲くはずだった華「バスケットボール3×3 チアダンサーズ」を追いかける
◆【前編】″ダンスの救世主″カリスマカンタローかく語りき 「絶対やり遂げてから死のうと思っている。」
◆【後編】″ダンスの救世主″カリスマカンタローかく語りき ダンサーの本質的な幸せと権利
著者プロフィール
Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター
『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。
















