【ボクシング】13度連続防衛への通過点・V9目指す拳四朗 対するは「下剋上」狙う矢吹正道

 

【ボクシング】13度連続防衛への通過点・V9目指す拳四朗 対するは「下剋上」狙う矢吹正道
前回のリベンジに挑む 寺地拳四朗(C)Getty Images

■コロナ明けの王者、コンディションは万全か……

では、試合は、本当にチャンピオンの楽勝だろうか。実は、そう言い切れない理由がある。ひとつは、コロナでの試合延期だ。この試合は当初、9月10日に予定されていたが、8月末にチャンピオンにコロナ陽性が発覚し9月22日に延期された。

ボクシング界でコロナによる延期は珍しくないが、わずか12日後へのリスケジュールは異例中の異例だ。果たして、チャンピオンのコンディションは大丈夫なのだろうか。

この質問に対して、拳四朗陣営は「37.5度の微熱が続いた程度」「療養中はトレーニングをせず、動画を見て過ごした」「9月6日から練習を再開した」と答えている。聞けば聞くほど不安になる。本当に世界タイトルマッチを戦える状態なのだろうか。

2つめの不安は昨年末に起こした器物損壊騒動。制裁金300万円に加え、3カ月間のライセンス停止、奉仕活動と重い処分を受けた。いつもは童顔に満面の笑みを浮かべる拳四朗が、今年4月の防衛戦後には涙で声を詰まらせた。みそぎは済んだかもしれないが、心のダメージは残っているだろう。

3つめは、対戦相手。拳四朗は他団体との統一戦、ビッグマッチを望んでいる。9度目の防衛戦ともなれば、実現していてもおかしくない。ところが、コロナの影響で外国人ボクサーを呼びづらい事情もあり、前回の久田哲也(ハラダ)に続き、日本人同士のタイトルマッチとなった。チャンピオンとしてのモチベーションは上げづらい。

■下克上なるか  ついに巡ってきた人生を変えるビッグチャンス

やはりビッグマッチを熱望しながら叶わず、9月1日に防衛戦を行った井岡一翔(志成)は、格下選手を相手に凡戦を演じた。いくら優秀なチャンピオンでも、気持ちが燃え上がらなければ相手を圧倒できない。ボクシングとはそういうスポーツだ。

逆に、矢吹は王座奪取に燃えている。デビュー5年で初めて巡ってきた初めての世界戦。リング下には、彼を支えてきた妻と2人の子供が駆けつけるはずだ。日の当たる道を歩いてきた同じ年(29歳)のチャンピオンを食って、人生を変えることができるのか。これぞ一世一代のビッグチャンスといえる。

Advertisement


矢吹の座右の銘は「下克上」という。ベビーフェイスに下克上を叩きつけるか、真っ白に燃え尽きるか。見せ場たっぷりの、スリリングなファイトを期待したい。

◆拳四朗 コロナ感染の影響なし 8月25日判明…1カ月足らずでV9戦も「自信しかない」

◆矢吹正道 王者・拳四朗のコロナ感染で試合延期も「自信は深まった」田中恒成とスパー

◆初防衛成功の中谷潤人、“衝撃の左ストレート”が米国でも高評価「アコスタの鼻から鮮血が…」

著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

izukawaya