■歴史にチーム名を刻んで行くチャンレンジ
ミクシィというバックグラウンドを持つチームだけに、さらに一歩踏み込んだAR/VRなど最新技術を駆使した観戦方法についての構想を聞くと……。
「(財政状況もあり)実はまだ投資できていません。また、AR/VRについては、まだファンが満足できるレベルまで技術的に進化していないと思いますので、クラブでの導入はまだ時期尚早と思っています。やはり、場所と空間とセットで構想すべきとも考えるので、新しいアリーナと同時に設計できればという思いがあります。それよりもまずはファンの体験クオリティをいかに挙げられるか注力、ITよりもライブ体験を上げるほうがプライオリティは高いです。その点は、モンストでもジェッツでも同じ。まずはライブ体験。すると、ネットでも必ず広まって行くと思います」と最新技術を盲信することはないと明言した。
立ち返れば、就任一年目で悲願だったリーグ初優勝を成し遂げた。今シーズンの意気込みについて訊ねないわけにはいかない。
「2連覇を目指すことができる立場にいるので、そこはしっかり狙って行きたいと思います。また、天皇杯3連覇を達成したチームとして、リーグと天皇杯を同一シーズンに制したチームがないので、両制覇も狙いたい。まだ、スタートから間もないリーグだけに、その歴史にどんどんチームの名を刻んで行くチャンレンジをしたい」。
おそらくBリーグとして初めて、富樫勇樹選手が「年俸1億円プレーヤー」として大々的にメディアに取り上げられた影響とミクシィというサポートがあるため「千葉ジェッツふなばしは、『金満球団』のイメージを持たれるようですが、とんでもない。今季の決算発表でも黒字だったように見えますが、親会社や地域のパートナー、ブースターの皆さまの支えがあって生き延びたほどです」。
常勝と言われたチームでも2シーズンに渡る新型コロナの大打撃で、観客動員数は40%、チケット収入こそ60%だったが、アルコール無しの飲食収入は14%、物販は70%と軒並み落ち込んだ。
「地域の方々に支えられてこその、黒字経営を続けて行きたい。実は、このコロナ禍でファンクラブの会員数が以前と比較すると半分に減少しています。ファンクラブは、チケット購入に対してアドバンテージがあるのですが、その観戦自体ができないのもひとつの要因。コロナは相当厳しい、ファンのみなさんの日常を変えてしまっているので油断できない。こうした状況でも、来場してもらえる新しいファンをしっかり獲得していかないといけない。これは間違いなく楽観視できません。すべては、人と人の繋がりがファンの集客なのでサイクルをと切らせない。指数関数的、クラスター時にファンを広げていくつもりです」。
■2連覇、そしてリーグと天皇杯Wチャンピオンを狙う
新型コロナ禍においても、世論はすぐにスポーツ不要論へと傾く。甲子園も中止、プロ野球も中断……しかしアメリカではNBAも「バブル方式」でプレーオフから決勝まで完遂。ヨーロッパでもサッカーは早々に市場に戻って来た。F1は世界を転戦しているが、日本GPは中止の決定。こうした自体は日本におけるスポーツの社会的地位の低さを物語っている。ステータスの低さが、すぐに不要論へと飛び火する要因だと考えたが、その点はどう分析しているのかも訊ねた。
「スポーツのステータスが低い原因はいくつかあります。ひとつは、日本ではスポーツに求められる公共性が高すぎる点。商業的になると嫌われる。教育、体育の延長で捉えられ、儲けちゃいけないという風潮があります。いやいや、儲かればいろんなことができる。人材にも興行にも、サービスにも投資できます。営利団体なので、そのギャップを埋めないといけない。
アメリカのスポーツファンは、チームのオーナーが交代しても、チームが強ければ賛成してくれる。しかし、日本のファンはそれを『身売り』と呼びNGとする潮流があります。ジェッツもまさに資本の入れ変わったチームでありますが、ファンに納得してもらえる商品を出して、それが受け入れられるようにしたい。
もうひとつ。今後はこれまでのイメージを払拭し、若者の感覚をどう開拓していくか。スケードボードのような格付けが必要だと思います。そのためにも、ぜひアリーナ体験を進めて行きたい」と分析した。
Bリーグもいよいよ6年目のシーズンが開幕。2連覇、そしてリーグと天皇杯、Wチャンピオンを狙う田村さんの2年目のシーズン、コロナのピンチから脱却に加え、新しいビジネスの展開など、モンストで発揮された手腕で、どのようにスポーツの新領域へ切り込んでいくのか、楽しみでならない。
◆【インタビュー前編】モンストからバスケへ 田村征也・千葉ジェッツふなばし代表取締役社長 就任一年目で悲願の初優勝
◆【スポーツビジネスを読む】「人生の縮図」レース沼にはまった石渡美奈Hoppy team TSUCHIYA共同オーナー 前編 かつカレーを平らげながら待った初優勝
著者プロフィール
松永裕司●Stats Perform Vice President
NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ Microsoftと毎日新聞の協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Directorなどを歴任。出版社、ラジオ、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験を持つ。1990年代をニューヨークで2000年代初頭をアトランタで過ごし帰国。Forbes Official Columnist。
















