■dip BATTLESのきら星、RAIKIの思い

dip BATTLESの中心的ダンサーとして存在感を放つRAIKI(C)dip BATTLES
現在20歳のRAIKIは、子供の頃に始めたいくつかの習い事では飽き足らず、7歳のときにテレビで見たアーティストの踊りに惹かれ、自ら親に望んでダンスの世界に足を踏み入れたという。その後、めきめきと頭角を現し、高校生の時には「DANCE ATTACK!!」で高校生日本一を獲得し、Dリーガーになる前からOVERSTEP CREWというダンスチームのリーダーとして活躍していた。
また、Dリーグの初シーズンである20-21 SEASONはSEPTENI RAPTURESに在籍。それらの豊富な経験の後に、dip BATTLESに新たに加入したという経緯を持つ。既に14年に亘るダンス歴を持つRAIKIだが、Dリーグに自分が参入できたことのすばらしさを、この一年半を経てことさら強く感じているという。そんなRAIKIの思うDリーグとdip BATTLES、そしてダンスへの思いを言葉にしてもらった。
「これまで僕がやってきたダンスと、Dリーガーとして踊ることの一番の違いは何かというと、12ROUND連続する競技なので、いろいろ試行錯誤で難しさもありますが、本当にありがたいことに、チームにしっかりと固定ファンがついてくれていることです。いつもファンの存在を感じながら、応援してくれている人たちのためにひとつでも順位を高くしたいという思いがあって、それをモチベーションに頑張っています。

(C)D.LEAGUE 21-22
チームメンバーは皆ナチュラルというか、自然体でとても仲が良いのが特徴です。なによりも全員が、ダンスを楽しむという気持ちをとても大事にしています。皆のダンスに対しての思いが熱いので、時にはぶつかることもありますが、お互いが引いたり、尊重したりして結果的には良い状態で踊れています。それでも、何かうまくいっていないな、と感じるときには一人になって、まずは自分の心の中を振り返ります。そうすると、あるべき心持ちや、進むべき方向が見えてくるので。そのふり返りは定期的にやっています」。
Dリーグの11チームはそれぞれに違った魅力と個性を持っているが、dip BATTLESの演技を見ていると、チームの一体感と躍動感がことさら楽しく迫ってきて、惹き込まれると同時に元気を運んでもらえるものだ。それはこのような、メンバー同士の真摯な“思いの交感”の賜物であり、それが彼らの演技のポジティブな雰囲気にまで昇華されているのだろう。
■Dリーガーの域を超えた、国民的スターへの道筋

(C)dip BATTLES
21-22 SEASON、新たにdip BATTLESに加入を果たしたRAIKIは、自分がDリーガーとなったこと、今シーズンdip BATTLESに参加できたことを話すときに「有難いことに」という枕詞を必ず付けて発言する。Dリーグという類まれな舞台でプロダンサーとして活躍できること自体、本当に、後で振り返れば“邯鄲の夢(かんたんのゆめ)”のような出来事かもしれない。しかし往々にして、人はその夢の中では、文字通り只々夢中でその時を過ごしてしまうものだと思うが、RAIKIのようにしっかりとそれが「有難いこと」だと日々認識するならば、その思いは必ず美しい結晶となって踊りに現れてくるに違いない。
実際、RAIKIのダンスは、関節を感じさせない程に滑らかな動きとバネのような強さでスキルの高さを存分に感じさせながらも、全体的には、無垢な魂が燃えているような清廉な印象を残すものだ。そんなRAIKIのピュアな魂に、SHUHO氏の望む、スターになるという気概が十分に伴ったときに、一Dリーガーの域を超えた、国民的スターの輪郭が浮かび上がってくるのかもしれない。
毎ROUNDでジャッジの入れ替えがあり、1シーズン12ROUNDという長丁場のなかで、テーマや衣装、振り付けはもちろん、演技の順番や他チームのナンバーとの兼ね合いも見据えて、いかなる戦略を立てて戦うかということは、Dリーグで勝ちすすむためには必須のポイントであるが、21-22 SEASONからの参戦後、 ROUNDを経るごとに戦い方を心得て、徐々に順位をあげてきているdip BATTLESの煌めきは増すばかり。後半戦の健闘が楽しみだ。そしてRAIKIが今後さらに、スターとして花開くであろう可能性を思いながら、来たる2月28日、ROUND.8の闘いの火蓋が切られる時を待ちたい。
◆THE GREAT HEART of“8ROCKS” ブレイキン世界一のISSEI率いる熱き魂
◆Dリーグ唯一のガールズチーム「I’moon」が描く未来図 「夢の選択肢を増やしたい」
◆“ダンスの救世主”カリスマカンタローかく語りき 「絶対やり遂げてから死ぬ」覚悟
著者プロフィール
Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター
『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。