■自分の良さを見失わずに「勝ちにいくテニス」の追求を
「良仁にとって負けないテニスとは、出来る限りリスクを減らし相手が嫌がることを徹底してやり続けることです。それは細かな戦力分析から始まり、どんな強い選手にも必ずあるウィークポイントを探しだしてストレスを抱えさせます。それは根性論ではなく、緻密な計算と良仁の高い技術力があるからこそ叶えることが出来るもの。よく走り、より頭を使うことで相手の隙を見つけ、最後は攻略する。そんな彼の初心とも言えるテニスを再構築しました」とのその取り組みについて話す。
ペースや回転を巧みに操り、ミスを誘いながら相手の長所でさえも抑え込む。傍から見れば長く続いているようなラリーの中にも彼の1球には必ず意味があり、ネット越しの相手に「次はどう来る?」と常に精神的なプレッシャーを与え続けた。
その西岡の真骨頂とも言える「負けないテニス」は、メキシコ・オープンでパワーヒッターのテイラー・フリッツ(当時ATPランキング16位)を戦略にはめきり、マイアミオープンでのダニエル・エバンズ(同27位)戦では心理戦の駆け引きを制して逆転勝利をおさめた。
また世界一位となったダニール・メドベージェフ戦では、思った以上に打ってこない彼の戦略は「負けないテニスの最上級」だったとも振り返る。
「メドべージェフはサービスが良くて3本目も鋭い。でも攻撃的なのはサービスゲームだけで、リターンゲームになると予想以上に打ってこなかった。出来る限り球速を落としラリーをし、良仁が打ってくるのを待ってカウンターを狙っていましたね。無理してリスクを背負わず、攻撃できるところだけ打つ。そのやり方に良仁でさえ打ってしまいたくなっていましたから」と分析する。
今のテニスについていきながら、自分の良さを見失わないこと。それは多くの選手が成長を求める過程で手を焼いている点だろう。今回の西岡兄弟の歩みを見ていると、攻撃力というものは何かということを改めて考え直させられる。
この活躍から全豪後には123位まで落ちたランキングを89位まで取り戻した。さらに今後は、もう一度ツアー優勝を目指すと同時に2020年に記録した48位のキャリアハイを超えるべく「勝ちにいくテニス」の追求を続けている。
そんな西岡はクレーシーズンを前に苦悩を乗り越え、とびっきりの笑顔を見せた。
快進撃はこれからだ。新たなステージに向かい、過酷なツアーを戦い抜く。
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著者プロフィール
久見香奈恵●元プロ・テニス・プレーヤー、日本テニス協会 広報委員
1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動に尽力。22年よりアメリカ在住、国外から世界のテニス動向を届ける。










