B1リーグ、第6節が19日、20日に各地で開催された。川崎ブレイブサンダースは敵地、愛知県小牧市にあるパークアリーナ小牧で名古屋ダイヤモンドドルフィンズと戦った。バイウィーク前、第98回天皇杯全日本バスケットボール選手権大会3次ラウンドに臨んだが、横浜ビー・コルセアーズに敗戦。川崎は3連覇がかかる大会だったが残念ながらここで敗退となった。気持ちを切り替え挑んだリーグ戦。名古屋Dを相手に、GAME1は85-73で勝利するも、GAME2では58-77で敗れた。
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■天皇杯3連覇を逃した意味
勝利したGAME1終了後、「平均で90点以上取っているチームを73失点で抑えられた」と佐藤賢次ヘッドコーチは勝因について語った。しかし、決して満足のいく戦い方だったわけではない。「前半、いいシュートを打っていたが入らなかった。苦しい時間帯が多かった。後半途中まで我慢、我慢の時間だった」と振り返った。前半、オフェンスはリズムに乗り切れず20分間で25得点にとどまり、8点のリードを許し前半を折り返した。第3クォーターにはさらに差が開き、15点リードを許す場面も。ハーフタイムには「ディフェンスの強度を落とさず継続すること、切り替え早くプレーすること」を指示した。オフェンス面では、相手のディフェンスに対応する指示を出す前に「選手たちが話し合って解決していた。徐々にディフェンスが効いてきて、いい流れを若い選手たちが繋いでくれた。彼らが掴んだ勝利であり、自信にして欲しい」と評価した。
佐藤HCが語った若い選手たち…その中には、今シーズンから加入したポイントガードの納見悠仁も含まれている。その納見に試合後、話を聞くことができた。「前半、2クォーターの途中からコートに立ったがいい流れで入れなかった。後半はディフェンスから積極的にプレーしよう」と考えていた。納見らのプレーがもたらしたいい流れの中でも、ディフェンスの強度が崩れることなく遂行できたことを、自身でも評価していた。
開幕から6節までを戦い終えた。「ここまで、チームメートとコミュニケーションをよく取ることができている。来た当初に比べればチームに馴染めていると思う。精度をもっと上げていけば、より良くなるはず。色々な連携もこれからさらに取れてくる」と現在地を振り返る。指揮官からも「オフェンスに関してはとても頼もしく、自分なりに仲間を生かすことや自分で攻めることを、コントロールしている。自ら選手間でコミュニケーションを計り、考えてプレーしてくれている。このまま成長してくれるだろう」と合格点を与えつつ、さらなる期待が感じられた。
天皇杯の連覇を納見は味わっていない。それでもチームの中で、「自分が思う以上に、みんな悔しいはず」と3連覇を目指した意味と敗戦の厳しさを感じた。怪我の選手を抱えるなど、「チーム事情や状況もありながら、Bリーグのチャンピオンシップへ進出し、勝つためにどうすれば良いのか、コーチ陣も選手たちも考えながらバイウィークを過ごしてきた。その中で、自分はコミュニケーションを取るなど、良かったところをもっと伸ばしていきたい」と取り組んできた。この日も、コート上ではプレーや連携などについて積極的に話しかける姿があった。「みんな、コミュニケーションを取ってくれる選手なのでありがたい」と、日々向き合っている。現在25歳。臆することなく、らしいプレーを披露してもらいたい。
■ディフェンスでの貢献は課題
もちろん課題もある。佐藤HCも「ディフェンスはまだ激しさやタフさが、先輩たちのレベルに追いつく必要がある。そこが伸びれば」と指摘。コーチ陣が求めるディフェンスレベルに到達すれば、川崎の顔として長く活躍する2人のポイントガード、篠山竜青と藤井祐眞をより脅かす存在になるだろう。納見自身、「ディフェンダーの選手から話を聞いたり、見て盗んだりの最中。ディフェンスは技術も大事だが、気持ちも大事だと思う。ハッスルしてプレーする」と意識している。コーチ陣や仲間からの信頼を今後勝ち取っていく姿が想像できる。
川崎は第6節、計11試合を終え、6勝5敗。中地区3位にいる。チームが今後波に乗るためには課題が多く、シュートのミス以外で相手へ攻撃の権利が移るターンオーバー数がB1リーグ24チームの中で現在ワースト3位。また、スリーポイントシュートの成功率は最下位に沈んでいる。GAME2では、最大36点差がついた時間帯があった。
これを是正するために、納見は「失点を少なく、中心選手以外の選手の得点を増やすことができれば、自ずとチームの得点も伸びてくる。(練習では)前田悟もシュートが入っていた。そういった選手たちの得点を伸ばし、チームのオプションを増やしたい」と今後を見据える
川崎が本来の底力を発揮するためには納見をはじめ、スモールフォワードの前田や増田啓介などのより一層の成長、活躍も必要不可欠。天皇杯3連覇という目標は途絶えたが、リーグ戦の優勝のためには、まずチャンピオンシップに出場しなければならない。中地区では、現在、三遠ネオフェニックスが首位を走り、サンロッカーズ渋谷が続く。
混戦模様の中で最後に笑うためには、ひとつも取りこぼしはできない。次節は26日、27日、ゼビオアリーナ仙台で今シーズンB1へ昇格した仙台89ERSとの対戦が待っている。
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■著者プロフィール
木村英里(きむら・えり)
●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長
テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。