【スポーツビジネスを読む】日本最大級スポーツサイトのトップ・山田学代表取締役社長 後編 「日本のスポーツをDX化する使命」

6月22日にリニューアルされたスポーツナビのTOP画面(提供:スポーツナビ)

■スポーツ界でのキャリアを目指す人へのアドバイス

山田さん自身、日本最大級のスポーツコンテンツを抱えるサイトの代表となった立場を振り返り、これからスポーツ界でのキャリアを目指す人へ、どのようなアドバイスがあるかを訊ねた。

「よくあるパターンは、ちょっとスポーツ熱にうなされちゃう方が、スポーツの仕事を求めている場合です。それでフラーっとスポーツ業界に近づいて来ると、まず扉は開かない。(仕事なので)ファンを求めているわけではありませんから」とまずは釘を刺した。

スポーツビジネス全般へのアドバイスは広義に過ぎるので、山田さんは、スポーツのデジタルメディアに限定したアドバイスであると前置きした上で「2つの観点からお話します。ひとつは、まずはITとしてのアプローチ。優れたエンジニアやセンスあるデザイナーは、サイト作りのために必ず必要です。もうひとつは、サービスをグロースさせるアプローチ。グロースさせるマーケターや、その数値を徹底的に読むデータアナリストなどです。スポーツのみからのアプローチは難しいです」と、スポーツ・キャリアにおけるニーズについて解説。

そう語るものの、山田さん自身はもちろん門戸を閉ざすつもりはない。「スポーツで何かしたい……という情熱があれば、環境から学び成長することはできると思います。(その環境に飛び込むために)入念に下調べし、自身の強みを相手に伝えることです」、そうすることでスポーツの仕事への扉が開くのではないと推奨する。

「ボク自身は、スポーツ(ビジネス)に特殊性があるとは思っていません。例えば、スポナビに入社し、広告クライアントである飲料業界や自動車業界の方と会話する……もちろん、そちらの業界に精通している必要があります。それぞれの業界の構造は特有ですが、それはどこの業界も同じように特殊です。『スポーツは特殊だから……』と口にするのは、言い訳だと思っています」と、業界の特殊性はどこでも同様であると説いた。スポーツ業界を俯瞰する際、ぜひ参考にしたいヒントだ。

■「スポーツはエンターテインメントのひとつと捉えるべき」

近年、Bリーグ島田慎二チェアマンが同リーグの改革に向け「夢のアリーナ」を提唱、またプロ野球北海道日本ハム・ファイターズが北海道のシンボルとなる「ボールパーク構想」を発表するなど、以前は「箱もの」などと揶揄されたスポーツの「場」そのものの利点を見直す動きが潮流となっている。

もちろん、それは箱だけではなくコンテンツとセットになった見直しの動きだが、これに対しても山田さんは非常にポジティブなビジョンを持っている。アメリカを始め、スポーツの地位が高い「現場」を目撃して来た山田さんならではの視点もある。

「スタジアムなりアリーナに入った時、衝撃を受けるような場所が日本にも増えたら嬉しいですね。(NFL)スーパーボウルを観戦に行き、ダラス・カウボーイズAT&Tスタジアムに入った時は、衝撃でした。なにしろフィールドと同じかと思えるほどの超巨大ビジョンにあっけに取られ、もうそれだけで満足しそうになる……。あのような驚きがあるスタジアムを日本で具現化できるのか……日本ハムの新しいスタジアムは、本当に楽しみにしています」と、そのニーズについて力説する。

ボストン・レッドソックスフェンウェイ・パークシカゴ・カブスリグレー・フィールドなどメジャーリーグの歴史の重みを感じさせるスタジアムもひどく印象的だが、アトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムやシアトルのルーメン・フィールドなど近未来を感じさせる衝撃は、まだ日本のスポーツ界にはない。

「スポーツはエンターテインメントのひとつと捉えるべきです。『運動』のために建てられた、汗臭い体育館でスポーツの興行があっても、何の感動もありません。感動を掻き立てられるようなスタジアムやアリーナが日本に必要とされています」。

アメリカでは、スポーツのため、スタジアムのために自治体が投資するなどは常識。しかし、その投資が市民から「支持される、サステナブルなビジネスの構築が必要」と理想だけに終わらない現実的な視点も必要とする。

スポーツのデジタル・トランスフォーメーション完成のために、夢のアリーナやスタジアムと、スポナビのようなスポーツのデジタル・プラットフォームの完成とその連携が、日本のスポーツの地位向上に不可欠なのかもしれない。

日本のスポーツ・ビジネスの行く末、特にデジタル領域の将来はスポナビのようなメジャーサイトの牽引力に懸かっているとしても間違いなかろう。山田さんの今後の手腕をますます注視しておきたい。

おっと、うかつだった。山田さんが日本有数のバッシュー収集家であると知りながら、時間の関係で詳細を訊ねそびれてしまった。ご成婚の際、そのコレクションをめぐる逸話もあったと聞いたが、その行はまた次の機会にゆずろう。

日本のスポーツ・ビジネス発展に向けて、山田さんの今後の手腕が注目される(撮影:編集部)

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著者プロフィール

松永裕司●Neo Sports General Manager

NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ マイクロソフトと毎日新聞の協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Director of Sportsなどを歴任。出版社、ラジオ、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験を持つ。1990年代をニューヨークとアトランタで過ごし2001年に帰国。


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