■得意のバックハンドで相手選手を翻弄
バーティは彼女のメンターでもあるグーラゴングの栄光を追いかけるように、ウィンブルドンの神聖な芝の上を駆け回った。1回戦から彼女の代名詞であるバックハンドのスライスショットを放ちまくり、対戦したすべての選手を苦しめた。
第8シードのカロリナ・プリスコバとの決勝戦でもこのショットは、その威力を大いに発揮。ハードヒットを持ち味としているプリスコバに対して、バーティは序盤からスピンショットとスライスショットを織り交ぜ、プリスコバにペースを掴ませなかった。プリスコバはバーティのスライスショットを上げることに精いっぱい、ボールをひっぱたくチャンスを得られないことで、フラストレーションが溜まり続けていく。
時間を費やし、低く滑ってくるボールをようやく持ち上げられたかと思うと「待ってました!」と言わんばかりにフォアハンドのエースをお見舞いされる。プリスコバも数少ないチャンスを見つけては強打を仕掛けるが、その攻撃が、まるでなかったかのようにスライスでペースを戻され、バーティの術中にはまっている現実に直面し嫌気がさしたことだろう。
■子どもたちに伝えたい「夢は叶う」
近年、女子テニスにもパワーテニスの波が押し寄せる中、これほど豊富なショットバリエーションをそろえ、戦える選手はバーティ以外にない。こうしたバーティの活躍に惹かれ、スライスショットを武器に戦う選手がもっと生まれてきてほしいもの。
18歳で一度引退、それでもカムバックを成し遂げたテニス人生最大の目標を達成した世界No,1プレーヤーは、ウィンブルドン制覇について涙を浮かべながら、こう語った。
「オーストラリア人はスポーツの分野で豊かな歴史を持っています。そのほんの一部を担うことができるということを、私はいつも夢見ていた。つまり、レガシー(遺産)を作り、女の子や男の子が自分の夢を信じられるような道を作ることです」。
「Dreams do come true:夢は叶う」、そうインスタグラムに書き込んだ彼女の想いは、十分に母国オーストラリアに届いているだろう。
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著者プロフィール
久見香奈恵
1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動をはじめ後世への強化指導合宿で活躍中。国内でのプロツアーの大会運営にも力を注ぐ。











