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″ダンスの救世主″カリスマカンタローかく語りき  後編 ダンサーの本質的な幸せと権利

 

″ダンスの救世主″カリスマカンタローかく語りき  後編 ダンサーの本質的な幸せと権利
(C)D.LEAGUE 20-21

■D.LEAGUEをNBA級の世界最強ダンス・リーグに

「今後は、FIDAをアジアにもつくって、その下にプロリーグをつくれるような素地を整備していくのがこの10年くらいの目標です。日本に本部を置いた国際連盟組織をつくる準備も具体的に始まっています。でも、創るだけなら誰でもできるので。当然それを武器に、シンガポール、韓国、中国などの色々な国にリーグの誘致をかける。「リーグを創りませんか」と働きかけて、日本のDリーグをモデルケースとして持っていく、というイメージです。でもその実現には少し時間が必要だとは思うので、先に各国代表の1チームをその国の企業とかにつくってもらって、日本のリーグに参戦し、半年滞在してもらう。なんてことも、コロナ明けに実現したいと考えています。あとは、海外でのラウンド開催ですね。それぞれ1ラウンドを協賛してもらって、F1やスーパーGTみたいに、ドバイ・ラウンドモナコ・ラウンドを開催する、みたいなことが、各国との協力で出来ないかとも考えています」。

「そしてゆくゆくは、バスケのNBAが世界最強のバスケットリーグであるように、日本のDリーグをダンスのリーグのなかでは世界最強のリーグにしようということも、CEOの平野さん、EXILE HIROさんと話していることです。国外に輸出してプロリーグを創ろうと考えていますが、それでも、海外のダンサーたちが、「日本のD.LEAGUEに一番行きたい!入りたい!」となるようなものにしていきたいですね。いつかはバスケのNBA選手のような年俸を、まさかの日本のDリーグのダンサーが稼げるようになる、そんな未来を思い描いてます」。

Dリーグ初代王者に輝いたavex ROYALBRATSは賞金3000万円を手にした(C)D.LEAGUE 20-21

神田さんの口から次々に飛び出してくる、今後実現してゆくビジョンを聞いているのは本当に楽しい。ダンス界にそんな未来が訪れるなんて、とてつもないことのようにも聞こえるが、いや必ず実現してくれるに違いない、と思っている自分もいる。彼の元に、一緒にビジョンを観たいと、人や企業が集まってくるのも、よくわかる気がする。

「いままでは『ダンサー』といいながらも、インストラクターもして、稼がなくては生活をしていけないというのがダンス界の現実でした。ダンサーとして描く最高の夢が自分のスタジオを持つことまで、という時代が長かったのです。自分の母親がダンサーだったことも影響していますが、それが当たり前だという現実にも疑問を呈したんです。

ダンサーが、練習とショーをするということだけで、その対価として年俸で給料を稼ぐということ自体今までになかったことなので、そこはひとつ、歴史を変えられたのかな、とは思います。

まだまだこれからも、色々な問題が起きるでしょうが、乗り越えて。乗り越えた分みんながどんどん磨かれていくと思いますし、その磨かれた後も見直して、賛否もあるなかで繰り返して、3年目、5年目、10年目を迎えたときに、気が付けば描いた通りになってるね、出来上がって来たね、となるのかなと。いまは只々必死に、試行錯誤と繰り返して作っているだけですね。24歳からスタートして、Dリーグを始めるまで18年かかりました。今42歳ですけど、50歳までには諸々の体制を整えて、自走するようにしていきたい。そうしたら、次の10年のビジョンがあるので、それに取り組んでいきたいです。

でも、まだまだやることが多すぎて、創ったからには責任もあるし、常に時間が足りない、といつも焦っています。そして、今サッカーをやっている人たちが、FIFAを誰がいつどう作ったかなんて知らないように、30年後、50年後、100年後には、僕たちがDリーグをつくったことなんて知らない人たちが、自由に楽しむ世界になっているだろうなと思っています。でもそれでいいし、そうなっていって欲しいですね」。

未だコロナ禍の続く不安定な情勢ではあるが、11月のセカンドシーズン開幕に向けて、着々と進化をとげるであろうDリーグ、人間の根源的な欲求のひとつだとも言われているダンスが、救世主を得て切り開く未来が、暗くなるはずはない。面々と続いてきたダンスの歴史に、神田さんのビジョンによる熱き一石が投じられた2021年。そして遠からぬ未来に、その熱波が世界を席巻する日が来ることを信じて祈り、心待ちにしたい。

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◆【前編】″ダンスの救世主″カリスマカンタローかく語りき 「絶対やり遂げてから死のうと思っている。」

◆Dリーグ唯一のガールズチーム「I’moon」が描く未来図 「夢の選択肢を増やしたい」

◆神田勘太朗が語る『D.LEAGUE』 世界初日本発プロダンスリーグ 「ダンスは世界を獲れる」

著者プロフィール

Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター
『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー