2013年に日本一になったシーズンを最後に渡米し、7年間に渡ってニューヨーク・ヤンキースの背番号18を背負ってきた田中将大が電撃復帰した楽天。エース帰還とともに、8年ぶりのリーグ制覇、日本一へ向けて期待が高まっている。東日本大震災からちょうど10年目となる今季、GM兼任となった石井一久新監督の指揮の下で球団史上2度目の歓喜を目指す。
■田中将、早川の獲得でストーブリーグの主役に
2018年9月のGM就任以来、積極的な補強を敢行してきた石井新監督の最大の仕事となったのが、8年ぶりとなる田中将の日本復帰である。FAになったヤンキースとの交渉が不調に終わり、NPB史上最高年俸で古巣のユニフォームに再び袖を通した右腕の存在により、どのチームも二の足を踏まざるをえなかった「打倒・ソフトバンク」も、現実的になってきた。
もうひとつの大きな新戦力が、ドラフト1位入団の早川隆久。アマチュア球界で屈指の評価を受けていた早稲田大出身の左腕は、春季キャンプでもその高い実力を存分に見せつけており、怪我さえなければ1年目からの先発ローテ入りは当確。2位以下でも、大学、社会人の即戦力投手を3人獲得しており、特に3位の藤井聖は都市対抗でも活躍した最速150キロの左腕で1年目から1軍で活躍が期待できそうだ。
新外国人では、左腕のコンリーがメジャー実績も豊富で、リリーフでの活躍が期待される。ブラッシュ、ロメロが抜けた野手では、2019年にデトロイト・タイガースで15本塁打を放ったディクソンと、かつてのキューバ代表で、2014年から3年間はレッドソックスでもプレーしたカスティーヨを獲得。他のチームと同様にコロナ禍の影響で来日が遅れているが、楽しみな新戦力であることに変わりはない。
■最強先発陣は額面通りに機能するか
自慢は先発投手陣。田中将の復帰でビックネームが並ぶ豪華な布陣になった。昨季、自身4度目の最多勝に輝いた涌井秀章に、田中将の移籍後にエースの座を守った則本昂大、最優秀防御率のタイトルを獲得したこともあるベテラン・岸孝之の四本柱が形成される。ただ、4人合わせて「538勝ローテ」と騒がれているが、岸と則本は、故障や不調で近年の成績が今ひとつであり、復権をかけたシーズンとなることは忘れてはならない。残りの枠をドラ1の早川を筆頭に、塩見貴洋、弓削隼人、瀧中瞭太、藤平尚真などが争う。
リリーフ陣は、昨季途中に先発から再転向となった松井裕樹のクローザー復帰が確定的。昨年は抑えも任されたブセニッツを筆頭に、経験豊富な牧田和久やFA補償選手から活躍した酒居知史、1年目から38試合に登板した津留﨑大成、育成契約から復活した福山博之に宋家豪、安樂智大などがブルペン入りを争う。ルーキーの高田孝一と内間拓馬は先発、リリーフいずれも適性がありそうで、実績のある左腕の辛島航も状況に応じた起用が可能。「守護神・松井」が復活すれば、一気に型が決まる。
■リーグトップの打線は今年も健在
昨季はチーム打率(.258)、得点(557)、安打数(1029)がいずれもリーグトップだった打撃陣は、今や球界を代表するスラッガーとなった浅村栄斗を中心に、昨年FA移籍でチームトップの打率を残した鈴木大地、4番も任される島内宏明らが脇を固める。昨季から主将に就任し、前半戦は打率3割をキープしながら、9月末に腰痛で戦線離脱となった茂木栄五郎も復調すれば打線のキーマン的となる。内野手では小深田大翔、外野手では辰巳涼介と将来の主軸候補である若手も揃う。
昨季いずれもチーム2位の24本塁打、63打点とポイントゲッターとなったロメロの退団は痛手となるが、実績のある銀次やスイッチヒッターの田中和基、プロ2年目で規定不足ながら打率.295と台頭した小郷裕哉など、野手陣は層が厚く、新外国人2人が出遅れて“国産打線”でも他球団に引けは取らない。プロ3年目で正捕手の座をつかみつつある太田光の田中将との“爆笑問題バッテリー”も今季のひとつの楽しみとなる。
昨季はソフトバンクとの直接対決で9勝15敗と大きく負け越した。今季最初の対決は、満を辞しての開幕5カード目(4月9日~11日、楽天生命パーク)。まずは、どのような形でシーズンを滑り出すことができるか。再び、東北の地が盛り上がる1年が、やって来る。
記事提供:ベースボール・タイムズ
データ提供:野球DB