今週は、天皇賞(春)を占う上でも重要な前哨戦、第72回阪神大賞典(GII、芝3000m)が京都競馬場で行われる。
今年は、日経新春杯で1、2着を分け合ったブローザホーンとサヴォーナをはじめ、ダイヤモンドS2勝のテーオーロイヤル、昨年の天皇賞(春)3着のシルヴァーソニック、阪神大賞典2勝のディープボンドなど、長距離自慢の精鋭が集結。果たして、今年はどんなドラマが見られるだろうか。
そんな中、日経新春杯で重賞初制覇を果たしたブローザホーンが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。
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■垣間見えるいくつかの不安材料
初勝利はデビューから9戦目。そこから長距離戦を主戦場に、一歩ずつ階段を駆け上がり、前走の日経新春杯で、悲願の重賞タイトルを獲得したブローザホーン。さらなる高みを目指すべく、阪神大賞典で重賞連勝を狙うことになるが、そこまで信頼を置けない、いくつかの不安要素が顕在する。
まずは、前走が日経新春杯という点。過去10年の阪神大賞典で、前走日経新春杯組は【1.0.1.7】の成績で、2頭が馬券に絡んでいるが、いずれも日経新春杯敗戦組。日経新春杯を制して阪神大賞典へ臨んだ馬は、2014年サトノノブレス(2人気4着)、21年ショウリュウイクゾ(4人気10着)と、いずれも人気を背負って馬券圏外に敗れており、決して相性は良くない。
次に“長距離戦は騎手で買え”の格言。過去10年で阪神大賞典を制した現役の騎手は、岩田康誠、ルメール、戸崎圭太、和田竜二の4人だけで、さらに溯っても、内田博幸、武豊と、現役の騎手でこのレースを勝っているのは、名手と呼ばれる通算1000勝以上を挙げている6人だけだ。
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ブローザホーンの鞍上菅原明良は、昨年は70勝で全国リーディング11位、関東リーディング3位と、今年デビュー6年目ながら、若手のホープとして徐々にトップジョッキーへの階段を上り始めているが、芝3000m以上のレースでは、これまでに【0.0.1.4】といまだ勝ち星はなく、長距離戦での経験値が乏しいことは否めない。また本レース全体で見ても、過去10年において、日本人騎手で騎手免許10年未満の騎手は【0.1.1.21】勝率0%、複勝率8.7%で、がんばっても2着まで。経験がモノを言う長距離戦において、やはり鞍上のキャリアの浅さは気がかりだ。
加えて、2月いっぱいまでは、定年で引退する美浦・中野栄治厩舎の管理下にあったブローザホーンだが、3月からは、栗東・吉岡辰弥厩舎へ転厩し、心機一転の始動戦となる。関東から関西へ移動しての環境の変化など、越えるべきハードルは高そうだ。
近6走は京都大賞典の競走中止を除くと、【4.0.1.0】と抜群の安定感を誇り、人気を集める存在となるブローザホーンだが、初めての3000mでの戦い、さらに、阪神コースも初参戦となり、初物尽くしで迎える阪神大賞典。日経新春杯組の不振や若手の鞍上、厩舎の転厩など、不安要素が多く、妙味ほどの信頼感はないを考え、今回は思い切って「消し」でいきたい。
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著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか
20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。