第76回朝日杯フューチュリティステークス(15日/GI、京都芝1600m)には、サウジアラビアRCを制したアルテヴェローチェと同2着タイセイカレントのモーリス産駒や、京王杯2歳Sで父仔制覇を果たした新種牡馬・タワーオブロンドン産駒のパンジャタワー、新潟2歳S覇者のバゴ産駒・トータルクラリティなど好メンバーが集結。
ここでは、馬券検討のヒントとなる「血統」で本競走を攻略する。
◆【朝日杯フューチュリティステークス2024予想/穴ライズ】非重賞組のミュージアムマイルが人気なら……メンバー随一の成長力で浮上する単勝オッズ“2桁”想定
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目次
■阪神JFに続いて狙いは中距離向き
先週の阪神JFに引き続き、朝日杯FSも京都競馬場が舞台となる。京都と阪神の外回り1600mは直線の長い外回りというレイアウトこそ同じだが、スタート後、向こう正面から3角にかけて京都はかなりの坂を登るのに対し、阪神の場合はほぼフラット。
京都の場合は登り坂でペースが緩み、1800m向きの馬でも追走しやすくなるため、結果として中距離向きの血統の馬が台頭しやすいというのは京都外回りマイルGIあるある。先週の阪神JFも前半から中盤にかけて12秒台のラップが刻まれる格好となり、労せず追走できた中距離型、距離短縮組が台頭する結果となった。
ということで、先週に引き続き今回もテーマは「中距離質なレースになるのでは?」を立脚点に予想を組み立てたい。
ミュージアムマイルの父はリオンディーズで、母のミュージアムヒルはハーツクライ産駒のJRA3勝馬。近親にセントライト記念や京成杯AHを制したキングストレイルなどがいる。
最近だと二冠牝馬チェルヴィニアで知られるハッピートレイルズ牝系だが、基本のキャラクターはフォルリとボールドルーラーの機動力で走る小回り向きの牝系。チェルヴィニアやその母チェッキーノのラインが例外なのであって、どちらかといえば小回り巧者、内回り巧者が多いファミリーだ。
ミュージアムマイルの勝った前走黄菊賞は内回りの2000m。レースを見ると4角のコーナーでポジションを押し上げるいかにもハッピートレイルズな勝ちっぷりだった。
リオンディーズ×ハーツクライで確かに中距離向きの配合とはいえ、前半が緩む京都マイルなら十分に対応可能。距離については心配していないものの、今回はGIで直線の長い大箱コースに替わるのがどうか。
ここまで3戦2勝の同馬。唯一敗れたデビュー戦はゲートを歩いて出たうえ、前が残る絶望的な展開での3着とまだまだ底を見せていないのは魅力だが、牝系のキャラクターから長い直線の最後で脚が売り切れるシーンも想定しておくべきでは。
■バゴ産駒の育成に長けたノーザンファーム
トータルクラリティの父は先日種牡馬引退が発表されたバゴで、母父はスペシャルウィーク。祖母のスルーレートはフラワーCの2着馬で、近親には中山牝馬Sを制し、宝塚記念でイクイノックスの2着&凱旋門賞でも4着に好走したスルーセブンシーズがいる。
典型的な中距離血統なので京都開催は好材料に。前半が緩んで追走しやすい流れになるのなら、この馬の中距離馬としての素質はここでも十分に通用する。
欧州血統のイメージが先行して「バゴ産駒」と聞くと何となく晩成傾向に思えてしまうが、2歳GIにおけるバゴ産駒の成績は【0-2-0-4】で、複勝率33.3%と決して悪くない数字。
特にバゴ産駒の育成に関して世界一の腕前を誇るノーザンファーム生産馬に限定すると、クロノジェネシス(阪神JF)、ステラヴェローチェ(朝日杯FS)の2戦2連対となっている。サンプル数こそ少ないがこれは十分に評価すべき数字だ。
ちなみに「ノーザンファーム生産のミスプロクロス内包バゴ産駒」はこれまで9頭がJRAに登録されていて、クロノジェネシス、ステラヴェローチェ、トータルクラリティの3頭が重賞勝ち。
面白いのがこの9頭のうち実に5頭が今年の2歳世代だという点。
現2歳世代の配合を決める時期だったであろう2020年の下半期から21年の初頭は、ちょうどステラヴェローチェが2歳重賞で好走を繰り返していた時期とオーバーラップする。天下の大牧場がクロノジェネシスで抱いた仮説をステラヴェローチェが証明する形になったことが、2021年春の種付けにおける「ミスプロクロス内包バゴ産駒」の増加に繋がったように見える推移だ。
内回りと外回りの違いこそあるが、トータルクラリティは京都のマイルでデビュー勝ちの実績。しかも内回りにも関わらず加速ラップでブチ抜く優秀な内容だった。新馬戦らしく中盤が緩んでスローペースになったとはいえ、レースのラスト1Fを10秒台に入れて勝つのは並の脚力ではなし得ない。
本来はベストディスタンスより短い1600mとはいえ、京都外回りのコース形態を考えると十分に対応できるはずだし、日本で最もバゴ産駒を動かせるジョッキーが鞍上と言うのも心強い材料。
新潟2歳Sではいったんコートアリシアンに交わされながら差し返したところを見ると、バゴ譲りの重厚さ、底力をしっかり感じさせた。中距離質なレースなら上位候補の一角と見る。
あとは枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論に至りたい。
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著者プロフィール
ドクトル井上
【重賞深掘りプロジェクト】血統サイエンティスト。在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。