FAやポスティングシステムの恩恵を受け、毎年一定数の選手がNPB、KBOからMLBへの移籍を模索している。MLB移籍後に期待通りの活躍を見せる選手もいれば、思わぬ苦戦を強いられる選手も存在する。自国ファンの期待が裏切られるケースもそう珍しくはない。
2020年オフも複数の選手がMLB挑戦に動いたが、彼らに対する現地専門メディアの予想や分析はどうなっているだろうか?
2021年から「SPREAD」ではファンタシースポーツ専門メディアとしてアメリカで大きな影響力を持つ「RotoWire」と提携し、現地発の分析や予想を新たに紹介していく。
プレーヤーが実在する選手をピックアップして編成した仮想チームを用いて、ポイントなどを競い合うファンタシースポーツにおいて、戦力予想はまさにキモとなる部分。この分野において、ファンタシースポーツの本場・アメリカで確かな評価を得ている「RotoWire」は、NPBとKBOの注目選手にどのような評価を下したのか。
第1回は、2020年オフにKBOからMLBへの挑戦を目指した4選手。(各分析はKBOシーズン終了直後~12月中旬時点でのもの)
■金河成(キム・ハソン)
25歳 右投右打 遊撃手/三塁手
※2020年12月31日にサンディエゴ・パドレスと4年契約
以降もコンスタントに好成績を残してきた。打率.281、19本塁打以上を常に記録し、盗塁も平均21.7個記録している。昨季はキャリアハイのOPS(.920)と本塁打(30本)を記録している。ショートとしてこの打撃成績を残したことは特筆ものだ。
守備に関しては、KBOのショートとしては問題ないが、MLBのショートとしてレギュラーを務めるには不十分だろう。
米野球専門データサイト「ファングラフス」のダン・シンボースキー氏によるZiPSプロジェクション・システム(※1)では、金の成績を23本塁打、17盗塁、OPS+117と予測しており、サードとしては上々の数値が並んでいる。姜正浩(元ピッツバーグ・パイレーツ)のように適応することも可能だろう。
※1「ファングラフス」で用いられている選手の成績予測システム。
羅成範(ナ・ソンボム)
31歳 左投左打 外野手
※ポスティングによるMLB移籍を申請したが不成立
もし、羅が金河成と同じ年齢であれば、彼こそがオフシーズンで最も大きな話題を呼ぶ存在となっていただろう。2019年の故障の影響でMLB挑戦が遅れたが、見事なカムバックを見せ、打率.324、出塁率.390、長打率.596、34本塁打を記録した。
韓国で素晴らしい打撃を披露した羅だが、MLBでの活躍にはバットで存在感を発揮しなければならない。現状打撃面以外での長所に乏しいからだ。かつてはセンターを任され、盗塁も決めるアスリートであったが、年齢や2019年の膝の故障により陰りは隠せない。昨季もDHとしての出場がほとんどであり、ライトとしては45試合出場にとどまる。
打撃重視のKBO選手のほとんどはMLB挑戦で結果を残せていない。移籍が実現しても(結果を残せなかった)金賢洙(元ボルティモア・オリオールズ他)や朴炳鎬(元ミネソタ・ツインズ)と同様の運命が羅にも待ち構えているかもしれない
■クリス・フレクセン
26歳 右投右打 投手
※2020年12月19日にシアトル・マリナーズと2年契約
12月にマリナーズと2年契約を結んだフレクセンは、現時点で最も有力な「出戻りメジャーリーガー」だ。2017年から3年間メッツでプレーしたが結果を残せず、防御率8.07、WHIP(※2) 2.13と散々な成績であった。
その後、異例の若さで海外へ挑戦したフレクセンだが、この決断が功を奏した。ベアーズの主戦投手として素晴らしいシーズンを送り、回転数の多いカーブを多用することで防御率3.01、WHIP 1.09を記録。奪三振率は28.0%、与四球率は6.4%であった。
昨季後半戦での圧倒的な成績から、フレクセンはMLBチームでもローテーション後半を任せられる存在と考えられるだろう。フレクセン同様にKBOで活躍した後に、MLBへ復帰したジョシュ・リンドブロムやメリル・ケリーは、先発として最低限通用している。
※2 Walks plus Hits per Inning Pitched「投球回あたり与四球・被安打数合計」。投手が1投球回あたり何人の走者を出したかを表す数値。
■梁ヒョン種(ヤン・ヒョンジョン)
32歳 左投左打 投手
※移籍先未確定(1月12日時点)
残念なことに、32歳のベテラン左腕にとって2020年は株を落とす一年となった。防御率4.70、WHIP 1.42という結果だが、これは前半戦12登板で防御率6.31という成績が響いている(以降の試合での防御率は3.67)
年齢や近年の成績から考えれば梁への感心は、金廣鉉(キム・グァンヒョン、2020年にセントルイス・カージナルスに加入)のMLB挑戦時よりも寂しいものだろう。起用法もスウィングマン(※3)の域を出ることはないかもしれない。不確実な要素は多いが、梁が抱くMLB挑戦への熱意は高いはずだ。2014年にはポスティングを申請したが、起亜タイガースは金額を不服とし破棄。今回はFAでの挑戦となるが、ローテーション投手としてのチャンスを得られる環境を優先して求めるはずだ。
※3 先発と中継ぎの両方をこなす存在。
文=エリック・ ハルターマン(RotoWire)/編集・翻訳=SPREAD編集部
Supported by RotoWire