【スポーツ回顧録】マーくん、「神様、仏様、稲尾様」越えの歴史的意義

シーズン21連勝で稲尾和久の記録を塗り替えた田中 (c)Getty Images

楽天田中将大は13日、対オリックス戦にて無四球完投勝利を挙げ、昨年8月26日から2シーズンに渡って続く連勝を25と伸ばし、また単一シーズンの連勝を21として57年に西鉄稲尾和久が記録した20連勝のプロ野球記録56年ぶりに塗り替えた。

マーくんの連勝がひとつ伸びるたびに、各紙は大騒ぎして来たが、単一シーズンで21連勝を果たしてこそ、本当の「新連勝記録」、「歴史的偉業」の達成だと、筆者は弊稿で主張して来た。

そして、マーくんの記録達成を祈って来た通り今、まさに偉業を達成した。一体、この記録をどこまで伸ばすのか、不敗のまま2013年シーズンを終えるのか、今後の焦点だ。

■シーズン21連勝の歴史的偉業達成

田中が達成した記録の歴史的意義は深い。なにしろ、メジャーリーグで田中と比較することができる記録は、すべて第二次世界大戦以前のもの。2シーズンにわたっての連勝記録は、1936から1937年にかけてカール・ハッベル(当時ニューヨーク・ジャイアンツ)が記録した24連勝だ。

日本ではけっして知名度の高くないハッブルだが「キング・カール」と呼ばれたほどの人気投手。ナショナル・リーグに属するジャイアンツのハッベルとアメリカン・リーグニューヨーク・ヤンキースベーブ・ルースとの対決が「観たい」という少年ファンの声によって、メジャーのオールスターが生まれたという逸話を残すほど(しかし、実際には、「シカゴ・トリビューン」スポーツ記者アーチ・ウォードの尽力により1933年に初開催される)。

日本では、ハッベルの24連勝記録に脚光が浴びせられるものの(この間、46回1/3連続無失点の素晴らしい記録もある)、本国では1934年のオールスターにおいて、ベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグジミー・フォックスアル・シモンズジョー・クローニン野球殿堂入りした名打者を五者連続三振に切ってとった伝説の体現者として知られる。この記録により、前述の逸話が真実味を帯び語られているのだろう。

メジャーにおける開幕からの連勝記録と単一シーズンの連勝記録は、1912年にルーブ・マーカード(当時、ニューヨーク・ジャイアンツ)が記録した19連勝。同じくニューヨーク・ジャイアンツに所属していたティム・キーフはそれ以前、1888年に19連勝を果たしているが、マウンドからホームプレートまでの距離が現在よりも短く、「近代野球」の記録としては「参考」扱いと言ってよい。

こんな伝説上の記録に比類する連勝だけに、メジャーのスカウトが田中の視察に数多く現れたとしても、もはや何の不思議もない。

神様、仏様、稲尾様」の20連勝越えについても、同様だ。稲尾が20連勝を達成した1957年は35勝で最多勝。1961年には、1939年にヴィクトル・スタルヒン(巨人)が達成したプロ野球タイ記録となる42勝を挙げている。プロ野球での30勝投手は、1968年の皆川睦男南海)を最後に現れていない。残りシーズン、田中の登板は4回ほど。全勝で終えれば、25勝に到達する。最後に25勝以上を挙げた投手は、1978年に25勝した鈴木啓示(近鉄)だ。各紙が取り上げる通り、比較する記録がプロ野球史を巡る状況になって来た。

現在、田中のピッチャーとしてのパッケージを考えると、やはり投げ合って欲しいのは、ダルビッシュ有だろう。このオフ、田中は無敗のまま、メジャーへの扉を開けるのか…。日米間のポスティング制度の不備が取り沙汰されているものの、ぜひメジャーの舞台での二人の投げ合いを観てみたい。さらには、どちらかの投手に、オーレル・ハーシュハイザー(当時ロサンゼルス・ドジャース)が1988年に記録した59イニング連続無失点のメジャー記録を破ってもらうような大記録を期待したいもの…。

Yahoo!ニュース個人2013年9月15日 掲載分に加筆・転載

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著者プロフィール

たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー

『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨークで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。

MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。

推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。

リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。

著書に『My Lost New York ~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在(いま)』、『麗しきバーテンダーたち』など。

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