27日に阪神競馬場で行われる第62回・宝塚記念(GI、芝2200m)は牝馬が上位人気独占となりそうで、昨年の覇者クロノジェネシス、無敗で大阪杯を制し現在6連勝中と底をみせていないレイパパレ、GI戦線で度々馬券内に好走しているカレンブーケドールの3頭が有力馬として挙がる。
昨年のアーモンドアイを筆頭に国内外で「牝馬」が競馬界を圧巻した勢いそのままに、今年も大阪杯でレイパパレが三冠馬コントレイルやサリオス、グランアレグリアの3強を下した。
今年の宝塚記念でも「牝馬が主役」というムードが漂っている。
しかし過去、牡牝混合GIで牝馬が上位人気を独占したのは、15年スプリンターズSのストレイトガール、ベルカント、ウリウリの一例のみで、ストレイトガールは人気に応え勝利を挙げたがベルカント、ウリウリは馬券内に入ることすらできなかった。
果たして、今年の宝塚記念は、牝馬3頭を買えば的中するのか。ここでは馬券のヒントとなる「危険な人気馬」としてクロノジェネシスを取り上げたい。
◆【宝塚記念2021/追い切りジャッジ】推定7番人気以下の伏兵に「A」評価 「状態は確実に前走以上」
目次
■意外にも対牝馬が苦手のクロノジェネシス
まずは、「クロノジェネシスvs.牝馬」について考察する。昨年の有馬記念では1番人気に応え勝利したが、そんなグランプリホースにクビ差まで迫ったのは、同じ牝馬の11番人気サラキアだった。サラキアはそれまで牝馬戦線では好走していたものの、牡馬混合GIでは明らかに格下と評価されていた馬である。
昨年、天皇賞・秋ではアーモンドアイのスピードに屈して3着、大阪杯ではラッキーライラックにクビ差の2着、牝馬限定戦の2019年エリザベス女王杯では5着に敗れるなど、クロノジェネシスは意外にも牝馬に足元をすくわれるケースが目立つ。
クロノジェネシスは、牝馬が上位に台頭するレース、つまり牝馬特有のスピードやキレを求められる競馬では、同じ牝馬との差は縮まると見ていい。
■上がり最速が“絶対条件”の宝塚記念
続いて、「上がり最速」というキーワードも、クロノジェネシスの不安要素となる。宝塚記念は時計の掛かるレースではあるものの、じつは毎年、上がり最速馬が連対しているレースでもある。
しかし、クロノジェネシスの戦績を振り返ってみると、過去に上がり最速を出したレースは、2歳新馬(34秒5)、アイビーS(32秒5)、阪神JF(33秒9)、京都記念(35秒8)、そして昨年の宝塚記念(36秒3)の5レース。
このうち、京都記念と宝塚記念は水分を含んだ重馬場。バゴ産駒特有のパワーを要するの適性の差で上がり最速の脚を繰り出した印象があり、その他のレースでは昨年の有馬記念やエリザベス女王杯を筆頭に、乾いた馬場だと同じ牝馬に上がり最速の座を譲るケースが多く見受けられる。
当日の天候が読みづらい状況ではあるが、思ったほど馬場が渋らなければ、上がり最速を繰り出せない可能性は高い。
■鞍上は「クロノで勝つ方法」をまだ知らない
さらに、今回は恐らく単勝1倍台の人気を背負いゲートインすることになりそうなクロノジェネシス。前にいる先行馬にも、後ろから進む馬にもかなり厳しい「マーク」をされる立場になりそうで、とくにレイパパレ、ユニコーンライオンはグランプリホースに脚を使わせない競馬を組み立ててくるだろう。
よって、クロノジェネシスは逃げ馬と差し馬の両方を警戒しなければならない「相当なプレッシャー」があるなか、ジョッキーと意思疎通をしながらレースを運ばなくてはならないが、今回は主戦・北村友一騎手の負傷により、新たにC.ルメール騎手とコンビを組むこととなった。
最後に、そのC.ルメール騎手の「初騎乗」について。言わずも知れたトップジョッキーではあるが、これまではクロノジェネシス&北村友一を負かさんとレースをする立場にあった。要約すると「クロノジェネシス“に”勝つ方法」は知っているが、テン乗りとなる今回は「クロノジェネシス“で”勝つ方法」はまだ知らない。
このあたりは「上がり最速」と関連し、元来パワータイプの同馬の脚をどこで使うべきか。前に強力な先行馬がいるなか、名手と言えど、決して楽なミッションではないはずだ。
■馬券の妙味を考えると最終結論は「消し」
ここまでクロノジェネシスに関する不安要素を紹介したが、まずはコントレイルやデアリングタクトなどの有力馬が出走を回避するなか、ファン投票1位の支持を得て出走してくれることに敬意を表したい。
ただ、馬券の妙味を考えると、ここは「消し」の評価。
本命はレイパパレ。競馬界の「第7世代」の代表格ともいえる、前に行って上がり最速を繰り出す同馬の底知れないポテンシャルに期待する。対抗はユニコーンライオン。前走は恵まれた感もあるが、それでもGI馬・ブラストワンピースを下した持続性のある先行力は魅力。重賞ウイナーにまで上り詰めた勢いを評価したい。
以下、押さえでキセキ、ミスマンマミーア、アリストテレス、カデナ、アドマイヤアルバ。主役のクロノジェネシスを馬券からバッサリ“消し“とし、高配当を狙いで上半期の総決算を締めくくりたい。
■宝塚記念2021予想コラム一覧
▼穴馬予想
◆【穴馬アナライズ】巻き返し可能の“盲点”、好走条件ズラリで相手に入れるべき1頭
◆【穴馬アナライズ】素質開花で三強の“一角崩し”、前売り単勝10倍台の伏兵
◆【穴馬アナライズ】モズベッロ、掲示板内率80%の得意コースで軽視禁物
▼データ予想
◆【前編・有力馬】クロノジェネシスとレイパパレの明と暗、どちらかに該当する「馬券内0%」のデータとは
◆【後編・穴馬】データが導くモズベッロ 馬券内率「100%」の買いの条件とは
▼追い切り予想
◆【有力馬】レイパパレは「S」評価 自己ベスト更新「逞しさが格段に向上」
◆【有力馬】クロノジェネシスに辛口「B」評価 「闘争心は万全ではない」
◆【有力馬】クロノジェネシスを上回る「A」評価 「心身のバランスは相当いい」
◆【有力馬】推定7番人気以下の伏兵に「A」評価 「状態は確実に前走以上」
▼その他、データ傾向
◆【馬場情報】阪神は「芝・ダ:良」、芝のクッション値は「9.9」で前年より速い時計決着か
◆【枠順】最多7勝を誇る8枠にはキセキが入る クロノジェネシスの5枠は過去10年未勝利
◆【騎手データ】ルメール騎手は馬券圏内なし 同騎手を明らかに凌ぐ「グランプリの鬼」とは
◆【危険な人気馬】クロノジェネシス、5つの“消し”条件 競馬界の「第7世代」の勢いを支持
◆【適性診断】前年の覇者・クロノジェネシスに警鐘 「今年は“鬼門”のレース上がり35秒台の可能性」
◆【脚質傾向】上がり最速馬は「連対率100%」、レイパパレは全6戦のうち最速は2戦
◆【人気傾向】上位人気信頼も特筆すべきは6番人気、複勝率は驚異の50%
◆【前走ローテ】昨年とは異なるローテを歩んでの参戦、クロノジェネシスに不安データあり
文・西舘洸希(SPREAD編集部)