宝塚記念でグランプリ3連覇を目指すクロノジェネシス(牝5歳、栗東・斉藤崇厩舎)。春のグランプリは牡馬3冠コントレイルや牝馬3冠デアリングタクトなどが揃い、豪華メンバーでの争いが期待されたが、それぞれ回避し小粒なメンバー構成となった。この相手なら、GI3勝馬クロノジェネシスの実績は手堅くいちばん人気のようにも思えるが、今年の阪神の馬場を分析してみると、彼女にとって不得意な舞台に変貌を遂げている可能性があることが分かった。
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■阪神芝は昨年よりも時計が早い傾向
阪神競馬場は昨年からの京都競馬場の改修工事に伴い関西の主戦場となり、例年以上に多くのレースが開催されている。今年は2月2週目から5月1週目まで12週連続開催。わずか中6週で、先週から再び阪神開催となり“登板過多”の状況である。
普通に考えると、芝の状態はボコボコで、力のいる馬場状態。さらに、梅雨時の今は土が水分を多く含み、時計のかかる決着が多いと推測される。
しかし、昨年の春~夏開催(2020年3月~6月)と、今年(2021年2月~先週まで)の芝中距離戦の平均を比較すると以下のようになり、走破時計・上がり時計ともに、今年のほうが速い傾向にある。
2000m
2020年(22鞍):平均走破時計 2分2秒3、平均上がり 36.2秒
2021年(21鞍):平均走破時計 2分2秒1、平均上がり 36.0秒
2200m
2020年(9鞍):平均走破時計 2分16秒1、平均上がり 37.2秒
2021年(6鞍):平均走破時計 2分14秒3、平均上がり 36.4秒
2400m
2020年(9鞍):平均走破時計 2分29秒5、平均上がり 36.5秒
2021年(12鞍):平均走破時計 2分29秒3、平均上がり 35.8秒
■良好な芝がかえって足かせに
一部の騎手から「今年の阪神の芝は例年に比べて生育状況がいい」という話がある。先週のマーメイドSも、シャムロックヒルが内目を通って逃げ切り勝ちをおさめ、良馬場で勝ち時計は2分00秒4、上がりタイムは35秒3であった。
昨年は稍重での勝ち時計は2分1秒1、上がりタイムは36秒5だったが、どちらも前半1000mは60秒8と全く同じラップであった。馬場の差があるとはいえ、今年の上がりタイムが1秒以上速いのは、時計の出やすい馬場に変貌を遂げているからではないだろうか。
一説には、甲子園球場の阪神園芸ばりの、阪神競馬場の馬場造園課による努力の賜物とも噂されている。しかし、この早い時計の出やすい今の阪神が、クロノジェネシスにとっては足かせとなるかもしれない。
■力勝負は得意だが末脚勝負には不向き
クロノジェネシスは、昨年の宝塚記念で、勝ち時計2分13秒5、上がり3F36秒3と、稍重の力の要る馬場で圧勝。19年の秋華賞では上がり3F36秒1、昨年の有馬記念も上がり3F36秒2と、スピードを持続させ、終いの力勝負で真価を発揮するタイプの馬だ。
一方、19年エリザベス女王杯や、昨年の大阪杯、天皇賞(秋)など、レースの上がりが33~34秒台の末脚勝負となると、切れ味のある馬に屈して敗戦するケースが目立つ。ゆえに、中山や阪神には適正が高く、グランプリ連覇を果たしている。
前述の通り今年の阪神の馬場は例年とは環境が異なることが予想される。そのため、果たして例年通りの予測でグランプリ3連覇となるかは疑問だ。
■例年通りとは限らない勝ち馬予想
今週末は傘マークもついているが、おそらく良、悪くても稍重での開催が予想される。宝塚記念も、一昨年は良馬場で2分10秒8の好時計、稍重でも2分11秒台での決着が多く、時計の出やすい今年の馬場なら、2分10秒台での決着も予想される。
上がり34秒台に突入することは考えにくいが、35秒台での決着になると、クロノジェネシスにとっては苦手な展開。おそらくレイパパレやユニコーンライオンが逃げると思われるが、そこまでのハイペースになるとは考えにくく、スローペースからの切れ味勝負になる公算が高い。
そうなったときに、番手からレースを進めるクロノジェネシスにとって、前を行く馬の逃げ切り、あるいは後方から瞬発力を発揮できる馬の差し切りを許す、というような展開も予想できる。例年通りにいくとは限らない今年の宝塚記念、勝ち馬予想の難易度は高そうだ。
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文・SPREAD編集部