第18回キーンランドC(GIII、芝1200m)は、スプリント重賞3勝の実績を誇るナムラクレアをはじめ、昨年の当レース2着馬ウインマーベル、前走の函館スプリントSで重賞初制覇のキミワクイーンなど、スプリント戦線の猛者が集結。サマースプリントシリーズの行方を占うだけではなく、秋のスプリンターズSを見据える上でも重要な一戦だ。
そんな中、上がり馬のゾンニッヒが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。
◆【キーンランドカップ2023/血統傾向】重賞初制覇の可能性 条件合致で「5.5.1.11」の本領発揮へ
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■前走2着以下の馬たちは……
ゾンニッヒは、父ラブリーデイ、母エンドレスノットだけでなく、父父キングカメハメハ、父母ポップコーンジャズ、母父ディープインパクト、母母ウィキウィキと、すべて金子真人オーナーがかつて所有していた馬で配合された結晶。デビューから主に中距離戦線を走り、一歩ずつステップアップ。5歳の夏、初のスプリント戦となった前走の青函Sで、鮮やかな差し切り勝ちを収め、オープン初勝利を飾った。
本馬にとっては初の洋芝、初距離と、初物尽くしで挑んだ前走だったが、終わってみれば後続に2馬身差をつける快勝劇を演じ、スプリント適性と洋芝適性の高さを証明して見せた。再び洋芝の札幌芝1200m戦でも、注目を集める存在となりそうだが、その実力には、いささか疑問符が生じる。まず、前走青函Sのレースレベルについて。
2着以下に敗れた馬たちは、その後、1~2走戦っているが、
カルネアサーダ
青函S2着→しらかばS10着→UHB賞2着
マイネルジェロディ
青函S3着→しらかばS11着→UHB賞6着
ショックアクション
青函S4着→しらかばS14着
レッドベルオーブ
青函S5着→しらかばS3着→UHB賞5着
サトノアイ
青函S6着→UHB賞3着
と、札幌の芝1200mのオープン特別を転戦している馬がほとんどで、複勝圏内を確保する馬こそいるものの、勝ち切るまでには至っておらず、青函Sはメンバーのレベル的に、いまひとつだったのでは、という仮説が成り立つ。オープン特別で太刀打ちできない相手に勝ったくらいで、すでに重賞を勝っているようなメンバー相手に、果たしてどこまで通用するだろうか。
加えて、鞍上武豊騎手の“七不思議”とまでは言わないが、キーンランドCは、いまだ勝っていない重賞の一つ。歴史の浅いレースとはいえ、これまでに8回騎乗し、最高着順は3着止まり。2014年スマートオリオン(2人気7着)、20年ダイアトニック(1人気15着)、21年メイケイエール(1人気7着)など、チャンスのある馬にも騎乗していたが、勝ち星を上げることはできなかった。
もちろん、単なる巡り合わせ、偶然の産物ではあると思うが、その他の札幌競馬場で行われる重賞は、札幌記念の8勝を筆頭に、すべて制覇しており、残すは当レースのみ。コンプリートの懸かる一戦ではあるが、騎乗数の多さから考えると、縁のないレースと言えるかもしれない。
金子真人オーナーの配合の妙で構成されたゾンニッヒ。なかなか出世街道に乗れず、ようやく、スプリント戦に活路を見出したかに思える本馬だが、いきなり即重賞で通用するかと言えば、そんなに甘くはないだろう。ここは、強力なライバル勢が幅を利かせる舞台と考え、人気ほどの妙味は感じられず、今回のゾンニッヒは思い切って「消し」でいきたい。
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著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか
20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。