第168回天皇賞・秋(10月29日/GI、東京芝2000m)は、天皇陛下が観戦される「天覧競馬」となることがJRAより発表された。
天覧競馬は2014年の日本ダービー(ワンアンドオンリー)以来、9年ぶり。天皇賞・秋では、上皇ご夫妻が観戦された2012年の天皇賞・秋(エイシンフラッシュ)以来、11年ぶりとなる。
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目次
■最敬礼の名シーンが甦る天覧競馬
21世紀に入り初めての天覧競馬となったのは、2005年の天皇賞・秋。
「エンペラーズカップ100年記念」の副題がついた本競走を制したのは、なんと14番人気の牝馬ヘヴンリーロマンスだった。ゴール後、ヘヴンリーロマンスの馬上で鞍上・松永幹夫(現調教師)が貴賓席に向かい最敬礼を行った姿は、日本競馬史に残る名シーンとしてファンの心に刻まれた。
ちなみに、ヘヴンリーロマンスは普段、気性が激しいことで知られた牝馬だが、この時だけはなぜかスタンド前でピタリと動きを止めたという。
天皇賞・秋2回目の天覧競馬が、2012年。レースは、快速馬シルポートが飛ばし、前半1000m57秒3のハイペース。直線、日本ダービー2着のフェノーメノが抜け出し、これを目がけてルーラーシップらが追い上げるなか、漆黒のサラブレッドが内ラチ沿いから閃光のように突き抜けた。
2年前に日本ダービーを制し、長らく勝ち星から遠ざかっていたエイシンフラッシュの復活劇だった。
鞍上M.デムーロはウイニングランの後、スタンド前で下馬。ヘルメットを取り膝をついて両陛下に深々と一礼を捧げた。本来、検量前の下馬は禁じられているが、JRAが「陛下の御前で不正行為などあるはずもない」と、不問としたエピソードもファンの間で話題となった。
振り返れば、皇太子さまが観戦された2014年の日本ダービーでは、優勝したワンアンドオンリーの鞍上・横山典弘、前田幸治オーナーの誕生日が、皇太子さまと同じ2月23日生まれというエピソードもある。
ホースマンの想いがそうさせるのか、観戦する我々がそう感じるのか、天覧競馬では「ドラマ」が生まれる。

■「ダービー馬の意地」というシナリオ
現役屈指のトップホースが集結する第168回天皇賞・秋。最敬礼の名シーンを刻むのはどの馬か。
昨年の天皇賞・秋から前走・宝塚記念までGI4連勝中、世界ランキング1位に君臨するイクイノックスと鞍上C.ルメール。そのイクイノックスを昨年の日本ダービーで下し、約1年半ぶりの再戦となるドウデュースと鞍上・武豊。ディープインパクトが遺した大器プログノーシスと鞍上・川田将雅。
どの馬にも、きっと競馬史に残るドラマはある。
しかし、ヘヴンリーロマンスやエイシンフラッシュなど、これまでの天覧競馬には「サプライズ」というスパイスがあったのも事実。
今回、単勝オッズ1倍台も考えられるイクイノックス。しかし、この大本命に、最後に土をつけたのが、ダービー馬ドウデュース。両馬はこの日本ダービーを分岐点に、世界一の評価を得た馬と、海外挑戦で苦杯を味わう馬に分かれたが、ここで「ダービー馬の意地」というシナリオは悪くない。
ドウデュースは日本ダービー後、凱旋門賞へ挑んだが、不良馬場に泣いて20頭立ての19着。ドバイターフは現地調整中に左前肢跛行を発症し出走取消と精彩を欠いた。しかし、年明け初戦の京都記念は3馬身半差の圧勝を見せている。5月の遅生まれ、成長力のあるハーツクライ産駒という背景から、イクイノックスをクビ差振り切った日本ダービー以降、ライバル同様に成長を遂げている可能性はある。
ダービー馬とレジェンド・武豊による最敬礼が、令和初の天覧競馬に名シーンをもたらす気がしてならない。
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(T.Yamada/SPREAD編集部)