今週は、春の中距離戦線を占う上でも重要な一戦となる、第98回中山記念(GII、芝1800m)が中山競馬場で行われる。
今年は、ソールオリエンスとジオグリフ、2022・23年の皐月賞馬2頭が参戦。加えて、毎日王冠を制したエルトンバローズや、中山記念2勝のヒシイグアス、チャレンジC2勝のソーヴァリアントなど重賞ウイナーが11頭も顏を揃え、伝統の古馬GIIらしい見応えのあるレースとなりそうだ。
そんな中、昨年の皐月賞馬ソールオリエンスが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。
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■後方一辺倒では中山記念を勝てない
昨年の皐月賞では、圧巻の末脚でGI馬に上り詰めたソールオリエンス。ダービー2着、菊花賞3着と、クラシックは一冠に留まったが、同世代ではハイレベルのパフォーマンスを披露。有馬記念では8着に敗れたものの、古馬となった今年、復活を期して中山記念から再スタートを図る。
過去10年の中山記念では、勝ち馬10頭がすべて5番人気以内の馬から輩出されており、実力伯仲のメンバーが揃う中、紛れは少なく、人気馬が着実に結果を残しやすいレースだ。そんな中、1番人気の成績は【3.0.0.7】と、勝つか負けるか、両極端な成績で決して「好成績」とは言えない。また、騎手乗り替わり時は2017年アンビシャス4着、23年ソーヴァリアント9着と結果を残せておらず、今回乗り替わりとなるソールオリエンスも、同様の結末とならないだろうか。
さらに一番不安な点は「脚質」にある。というのも、ソールオリエンスは皐月賞に代表されるように、後方からレースを進めて一瞬の脚を活かしたいタイプ。京成杯やダービーなど、中団より前めのポジションで運んだこともあったが、近3走はすべて10番手以下から進めており、脚質が定まったというよりも、前半から前に行けないような印象もある。
開幕週で開催される中山記念だけあって、脚質の決まり手は逃げ・先行パターンがほとんど。4コーナー10番手以下の場合【0.0.0.34】と、馬券圏内は皆無だ。ソールオリエンスの中山成績は【2.1.0.1】と相性の良さと実績は上位だが、皐月賞は重馬場適性がばっちりハマったようにも見え、開幕週の高速馬場は向かない可能性が高い。
また前走有馬記念組は、過去10年で【1.0.0.6】と、GIからの直行としてはあまり結果を残せていない。2022年はパンサラッサが有馬記念13着から巻き返して勝っているが、同馬の脚質は逃げで、開幕週の中山にマッチしていた。
加えて、過去10年の中山記念勝ち馬10頭のうち9頭は近3走以内で勝ち星をマークしており、皐月賞以来4戦、勝ち星から見放されている点も、ソールオリエンスにとってはマイナス材料。主戦・横山武史からスイッチし、有馬記念は川田、今回は田辺で心機一転となるが、昨秋のセントライト記念で2着に取りこぼして以降、なんとなく歯車が狂った印象だ。人気ほどの信頼度はなく、妙味を考えると、ここは思い切って「消し」でいきたい。
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◆著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか
20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。